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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2021年1月号

成牛と畜頭数が減少する中、11月の肉用牛価格は最高値を更新

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牛群再構築に向けたと畜頭数の減少傾向が続く
 豪州統計局(ABS)によると、2020年7〜9月の成牛のと畜頭数は、166万8900頭(前年同期比21.0%減)と前年同期を大幅に下回った(図4)。内訳を見ると、雄牛は79万4300頭(同15.2%減)とかなり大きく下回っており、また、雌牛は87万4600頭(同25.7%減)と大幅に下回った。と畜頭数全体に占める雌牛の割合は、52.4%となり、干ばつにより雌牛のと畜が多かった前年同期を3.3ポイント下回った。
 
 
 また、豪州フィードロット協会(ALFA)および豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、穀物肥育牛の割合は前年同期を3.3ポイント上回った(図5)。牧草肥育牛生産者により牛群再構築に向けて牛を保留する動きが継続されていることから、と畜頭数は減少傾向が続いている。なお、直近のフィードロットの飼養頭数などについては、「海外情報」(注)でも詳報しているので、参照されたい。

(注) 海外情報「2020年9月末のフィードロット飼養頭数、11期連続で100万頭超(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002830.html
 
 
肉用牛価格の高値維持が続き、11月に最高値を更新
 牛群再構築の動きを受け、2020年1月から肉用牛価格は急上昇しており、肉牛取引の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、11月17日に829.25豪セント(655円:1豪ドル=79円)とこれまでの最高値を更新した(図6)。
 
 
10月の牛肉輸出量は、韓国と中東を除き前年同月を大きく下回る
 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2020年10月の牛肉輸出量は、と畜頭数の減少に伴う牛肉生産量の減少により8万1314トン(前年同月比28.5%減)と前月に続き前年同月を大幅に下回り、9カ月連続で前年同月を下回った(表2)。主要輸出先別に見ると、韓国や中東向けは前年同月を上回ったが、日本向けは同10.7%減と前年同月をかなりの程度下回った。米国向けは同33.7%減と3カ月連続で前年同月を大きく下回った。中国向けは同58.9%減と5カ月連続で前年同月を大幅に下回った。
  また、1〜10月累計の輸出量は、87万4418トン(前年同期比13.4%減)と前年同期をかなり大きく下回った。主要輸出先別に見ると、日本向けは前年同期比8.8%減、米国向けは同10.7%減、中国向けは同27.2%減といずれも前年同期を下回ったほか、10月に前年同月を上回った韓国や中東向けも前年同期を下回った。
 
 
牛肉生産量の減少により、牛肉輸出量の回復は遅れる見込み
 MLAは10月、「Industry projections 2020 October update」において、四半期に一度の牛肉生産量などの見通しに関する情報を公表した(表3)。このうち2020年の見通しの概要は次の通り。
 
 
 牛飼養頭数(2020年9月末時点)は、干ばつによる牛のと畜が進んだ結果、2462万1000頭(前年比6.0%減)と見込んでいる。と畜頭数は700万頭(同17.5%減)と前回(2020年7月)の予測と同じ水準で見込んでいるが、豪州農業資源経済科学局(ABARES)によると、牧草の生育状況は改善したものの、多くの農家が負債の返済と牛群再構築の必要性を天秤にかけるとみられるため、いまだ十分に牛群を再構築する体制となっていないとしている。牛肉生産量は、1頭当たりの枝肉重量が前回より1.4キログラム下方修正され、293.0キログラムと見込まれることから、前回より1万トン下方修正され、205万1000トン(同14.8%減)とかなり大きく減少すると見込んでいる。牛肉生産量の減少により、牛肉輸出量は前回より7000トン下方修正され、101万6000トン(同17.3%減)と大幅な減少を見込んでおり、輸出の回復は遅れるとしている。
 
(調査情報部 赤松 大暢)