豚肉生産量、3カ月連続で前年同月を上回る
欧州委員会によると、2020年8月の豚肉生産量(EU27カ国)は、前年同月比1.5%増の180万1900トンとなった(図9)。と畜頭数は前年同月並みの1955万頭、1頭当たり枝肉重量は同1.6%増の92.2キログラムとなった。生産量は3カ月連続で前年同月を上回ったものの、同年1〜8月の累計では、前年同期並みの1503万トン(前年同期比0.1%減)となった。
8月の主要生産国の豚肉生産量を見ると、スペイン(前年同月比11.2%増)、フランス(同0.3%増)、ポーランド(同10.1%増)、オランダ(同1.0%増)で増産となった一方、ドイツ(同3.9%減)、デンマーク(同8.4%減)、イタリア(同5.7%減)では減産となった(表6)。
EUの豚枝肉卸売価格、2019年3月以来の低水準に
欧州委員会によると、10月のEUの豚枝肉卸売価格は、前年同月比23.3%安の100キログラム当たり140.2ユーロ(1万7665円:1ユーロ=126円)となり、月平均では6カ月連続で前年同月を下回った(図10)。
豚枝肉卸売価格は、中国からの需要の増加により、2019年4月〜2020年3月の間は高値で推移していたものの、3月以降は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う制限措置の実施を受け、一時的に下落した。その後は、各国の制限措置の緩和により外食産業が徐々に営業を再開したことから、需要が回復に向かい、同価格は下げ止まっていた。しかし、9月中旬、ドイツの野生イノシシでアフリカ豚熱発生が確認されたことを受けて、再び下落傾向となり、10月の同価格は2019年3月以来の低水準となった。
価格動向を週ごとに見ると、9月7日の週以降、ドイツの豚枝肉卸売価格はEU平均を下回って推移している(図11)。ドイツでは12月11日現在、飼養豚でのアフリカ豚熱の発生は確認されていないものの、感染地域は2州に拡大し
(注)、野生イノシシでの発生件数は、302件にまで増えている。現地報道によると、同国では、現在、養豚場でと畜適期に達した肥育豚頭数は安定しているものの、COVID-19による食肉処理場の操業制限が続いていることから養豚場で出荷が滞っているとされている。一方、アフリカ豚熱の発生に伴う中国など主要輸出先における輸入停止措置により、ドイツ産豚肉が他のEU域内諸国に輸出され、EU全体として供給過剰となっているとされている。
さらに、デンマークにおいても、いくつかの食肉処理場での従業員のCOVID-19感染を受け、中国向け輸出が依然として停止されていることから、EUの豚枝肉卸売価格が下落したものと考えられる。しかし、11月30日から一部の食肉処理場からの中国向け輸出が再開されており、今後の動向が注目される。
(注) 海外情報「野生イノシシのアフリカ豚熱、2州に拡大。豚価は下落後、低迷続く(ドイツ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002814.html)を参照されたい。
(調査情報部 小林 智也)