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海外の需給動向【鶏肉/ブラジル】  畜産の情報  2021年1月号

国内飼料穀物価格を反映し、ブロイラー生産コストが大幅に上昇

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1〜10月の輸出量は前年同期をわずかに下回る
 ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2020年1〜10月の鶏肉輸出量は、前年同期比1.5%減の323万349トンと前年同期をわずかに下回った(表9)。本年前半は前年同月の実績を上回る月が多かったが、後半は多くの月で前年を下回り、10月には前年同月比11.7%減となった。これは、年初から米ドルに対しレアル安が進み、その後も1米ドル当たり5.5レアル程度と輸出に有利な状況にある一方で、生産コストの上昇などで通貨安による優位性が失われ、価格競争力が低下していることが要因であるとみられる(図14)。輸出先別に見ると、中国向けは、同国でのアフリカ豚熱の発生に伴う代替需要を背景に、引き続き引き合いが強く、56万3728トン(前年同期比22.8%増)と大幅な増加となった。一方、日本向けは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で外食需要が落ち込んでいることから同5.8%減となった。
 輸出額は、中国およびシンガポールを除く主要輸出先は前年同期より減少し、全体で45億6587万米ドル(4794億1600万円:1米ドル=105円)とかなり大きく前年同期を下回った。
 


 
ブロイラー用の国内穀物飼料価格が大幅に上昇
 ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)養鶏・養豚センター(CIAS)によると、鶏肉の最大生産州であるパラナ州におけるブロイラー生産コスト指数(2010年1月:100)は、2018年4月以降220ポイント前後で高止まっていたものの、2019年11月ごろからさらに上昇を始め、2020年4月には260ポイントを超えて10月には328.76ポイントとなり、この1年間で43.8%上昇した(図15)。これは、中国からの強い引き合いを背景としてブラジル産飼料穀物の輸出量が増加した結果、国内の飼料穀物価格が上昇したためとみられる。ブロイラーの飼料の主原料となるトウモロコシ卸売価格は、2019年10月以降上昇傾向で推移し、2020年10月には前年同月比約2.1倍の60キログラム当たり71.0レアル(1420円:1レアル=20円)と大幅に上昇した(図16)。こういった状況に対応するため、ブラジル政府は2020年10月16日、メルコスール加盟国(アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ)以外からの大豆およびトウモロコシの輸入関税を、大豆については2021年1月15日まで、トウモロコシについては2021年3月31日まで免除すると公表した。
 


 
鶏肉卸売価格は統計開始以来最高値を記録
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、鶏肉卸売価格は、ブラジルでCOVID-19が拡大し始めた2020年3〜5月にかけて下落したが、6月以降はブロイラーの供給量が減少する一方、鶏肉需要が強いことを背景として上昇傾向に転じ、その後急速に値上がりした。このため、11月の鶏肉卸売価格(名目価格)は、統計を開始した2004年以降の最高値となり、11月20日の価格は1キログラム当たり6.52レアル(130円)となった。同研究所は、その後の鶏肉の生産コストも依然高水準を維持しているとしている(図17)。
 

 
 
(調査情報部 井田 俊二)