新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う都市封鎖や外出規制など、世界各地で社会経済活動に対するさまざまな規制が実施された。COVID-19の世界的流行(パンデミック)は世界の多くの国民に混乱と心理的影響を与えるとともに、世界経済に大きな影響を与えた。
国際通貨基金(IMF)が2020年10月に発表した世界経済見通しによると、同年の世界の実質国内総生産(GDP)成長率はマイナス4.4%と見込まれている。これを主要国・地域別に見ると、米国がマイナス4.3%、ユーロ圏がマイナス8.3%、中国が1.9%、ブラジルがマイナス5.8%、日本もマイナス5.3%と中国を除き軒並みマイナス成長となっている。
主要国の食肉業界においては、COVID-19発生以降、都市封鎖に伴う買いだめや、外食産業の営業停止による需要の変化の他、移動制限による食品流通の混乱、食肉処理場での感染による操業停止など、さまざまな混乱が生じた。しかし、発生から約1年が経過し、このような困難に直面しながらも、各国の政府や関係者による支援策の実施などにより、生産、流通、消費の各段階においても一定の回復が見られるようになった。
わが国の食肉業界においても、外出自粛、飲食店などの店舗休業、テレワークの推進、外国人の入国規制なども相まって、外食や業務用需要が減少し、食肉を含む農畜産物の生産者や関連産業者などに大きな影響を及ぼした。機構では、食肉部門において、和牛肉の冷凍保管・販売促進のための支援などの緊急対策を行うと同時に、各国政府の対応などの需給に影響を与えるタイムリーな情報の発信に努めてきた。
世界の食肉貿易において、日本は牛肉、豚肉、鶏肉の主要輸入国であり、各国の食肉需給をめぐる情勢が刻々と変化する中、わが国の食肉の生産や調達にもさまざまな変化は避けられず、こうした世界の情勢を踏まえることは必要と思われる。
今号では、世界の食肉需給をメインテーマとし、米国の牛肉・豚肉、EUの牛肉・豚肉・家きん肉、ブラジルの鶏肉、中国の牛肉、豪州の牛肉の食肉需給について、2020年末までに明らかになっているCOVID-19の影響を中心に、委託調査などを活用した調査結果をまとめて報告する。本報告が、食肉をめぐる主要国の動きを理解し、ニューノーマルを模索する一助となれば幸いである。