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海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報 2021年2月号

10月の牛肉輸出量、再び増加に転ずる

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中国向けは大幅な増加
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2020年10月の牛肉輸出量は前年同月比3.8%増の11万7180トンと前年をやや上回り、再び増加に転ずる結果となった(表1)。
 
 
 また、同年1〜10月の累計を見ると、1〜3月は前年を上回る好調なスタートとなったものの、4月以降は8、10月を除き前年を下回った。特に5、6月はそれぞれ前年同月比30.9%減、同33.0%減と大幅に減少した結果、通期で見ると前年同期比5.3%減の108万5382トンとなった(注1)

(注1) 2020年の牛肉輸出をめぐる情勢については、「米国の牛肉産業における新型コロナウイルス感染症の影響について」(本誌19ページ)を参照されたい。

 10月の輸出量を主要輸出先別に見ると、首位の日本向けは前年同月比8.5%増の2万6934トンとかなりの程度増加したのに対し、第2位の韓国向けが前年並みの2万3955トン、第3位のメキシコ向けが同15.2%減の1万3378トン、第4位の香港向けが同4.8%減の1万1659トン、第5位のカナダ向けが同10.2%減の9758トンと、日本・韓国向けを除き軒並み減少している。
 また、中国向けは同7.4倍の8875トン、2020年通期においても前年同期比2.9倍の3万1158トンとそれぞれ大幅な増加となった。
 10月の牛肉輸出状況について、米国食肉輸出連合会(USMEF)は、「首位の日本向け牛肉輸出は安定して推移している。日本はテイクアウト需要を受けたファストフードや牛丼チェーン店が好調であるため、ショートプレート(バラ肉)の輸入量が増加している。一方、店内飲食やレストラン向けとなるロイン系の輸入量は減少している。また、2020年通期における日本の牛肉輸入に占める豪州産シェアは、前年同期比で4.3ポイント減の41.2%となった一方で、米国産シェアは同3.2ポイント増の43.7%と増加している」としている。
 また、韓国向けについては、「10月は前年並みとなり、2020年通期でも前年の記録的なペースを下回っているが、冷蔵牛肉の通期の輸出量は前年を29%上回っている。また、韓国の牛肉輸入に占める米国産シェアは増加傾向にあり、前年の50.4%から52.9%まで上昇している」と分析している。
 中国向けについては、「10月の輸出量は単月での過去最高記録を更新し、2019年の年間輸出量にまで迫る水準であり、急激な増加となった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の規制が緩和されたため、中国のフードサービス部門の需要は顕著であった」とコメントしている。

フィードロット飼養頭数、5カ月連続で前年同月より増加
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2020年12月18日に公表した「Cattle on Feed」によると、11月のフィードロット導入頭数は前年同月比8.9%減の190万6000頭と前年同月をかなりの程度下回った。また、出荷頭数は同1.7%減の178万2000頭と前年をわずかに下回った。
 この結果、2020年12月1日現在のフィードロット飼養頭数は、前年並みの1203万6000頭となり、5カ月連続で前年を上回った(図1)。12月は、前述の通り導入頭数は減少したものの、10月以降の繰り越し頭数が多かったことに加え、季節的に飼養頭数が増加する時期のため、前月比では6万3000頭の増加となり、記録的な高水準が維持される結果となった(注2)

(注2) 2020年のフィードロット飼養頭数をめぐる情勢については、「米国の牛肉産業における新型コロナウイルス感染症の影響について」(本誌19ページ)を参照されたい。
 

牛と畜頭数、回復するも前年には届かず
 USDA/NASSが2020年12月23日に公表した「Livestock Slaughter」によると、11月の牛と畜頭数(連邦検査ベース)は、前年同月比2.9%減の265万7000頭と前年同月をわずかに下回った(図2)。また、2020年1〜11月のと畜頭数は、前年同期比3.1%減の2941万8000頭となった。
 
 
 牛と畜頭数は、キャトルサイクルの拡大や飼養頭数の増加に伴い、2016年以降は4年連続で前年を上回っており、2020年も3月まで増加傾向にあった。しかし同年4〜5月は、COVID-19の拡大に伴い多くの食肉処理場において従業員の感染が相次ぎ、処理場の一時閉鎖や操業停止が行われ、同期間におけると畜・加工処理能力が低下した。その後、6、9月のと畜頭数は前年を上回るなど回復基調を見せたものの、通期で見ると、好調であった前年の水準には届かず、11月も同様の結果となった(注3)

(注3) 2020年の牛と畜頭数をめぐる情勢については、「米国の牛肉産業における新型コロナウイルス感染症の影響について」(本誌19ページ)を参照されたい。
 
(調査情報部 藤原 琢也)