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海外情報 畜産の情報 2021年3月号

新型コロナウイルス感染症関連の情報

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調査情報部
 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。
(掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは、前月号でご紹介したもの以降、1月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【欧 州】

1 (令和2年12月18日付)農業・食品等関係団体、英・EU交渉に5つの緊急要請(EU)

 欧州連合(EU)最大の農業者団体を含む4団体(下記参照)は12月9日、英国のEU離脱(BREXIT)移行期間が終了する2020年12月31日を間近に控え、移行期間後の措置に関する五つの緊急要請を共同声明で発表した。

 4団体は、最優先事項として雇用維持を挙げ、衛生植物検疫(SPS)措置や貿易の技術的障害(TBT)といった貿易上の障壁となり得る規則の統一および関税や関税割当のない協定を求めるとともに、労働者の権利、公平な競争条件の確保のため、協定合意の有無にかかわらず、下記の五つの緊急要請があるとした。

1.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりすでに影響を受けている部門において、経済的な混乱を避け、安定的に雇用が継続されるよう、交渉に関する結論が判明次第、直ちに詳細なルールを定めること

2.関税や通関のため複雑な手続きの復活が想定される合意なきBREXITは、特に農業・食品事業者に大きな影響を与える可能性があり、円滑な移行のための具体的な措置の他、EUのBREXIT調整準備金(本年7月に新たに措置)による支援が必要

3.事業者が円滑に新たな規則へ移行できるよう、行政機関による迅速かつ効果的な情報提供が必要

4.労働者の権利保護は必須であり、EUの農業・食品等関係部門が雇用する何百万人もの従業員の雇用を維持するための事業者への支援も必要

5.移行期間終了後に予測される混乱などに対応するため、欧州委員会と英国当局との対話の継続と共に、部門の関係者との対話も行う必要

 4者は共同声明の最後に、交渉の結果がどのようなものであっても、すべての人の利益のために強固かつ生産性のある関係を築くために、英国とEUが禍根を一切残さないよう求めるとしている。

 また、EU最大の乳製品貿易団体である欧州乳製品貿易協会(EUCOLAIT)は12月14日、英国・EUの交渉に対し、すでに多くの混乱を招いているとして声明を発表した。

1.事業者らはすでに対応策を講じてきてはいるものの、移行期間終了のわずか2週間前にあっても2021年1月1日以降に関税などがどのようになるか分からないという状況にあっては万全の準備を行うことは不可能。

2.合意なきBREXITが現実味を増す中、英国との間でWTOの最恵国待遇(WTO加盟国間の貿易にかかる一般的関税率)での取引を意味する交渉決裂は可能な限り避けるべきであり、2021年1月1日から協定発効までの間を現状維持とすることに合意すべきである。

 なお、先の共同声明の4団体は下記の通り。
 

欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)

 欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)とは、EU加盟国の2300万人以上の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および2万2000の農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織されたEU最大の農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。
 

欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)

 欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)とは、EU加盟国の29万4000社の事業者と470万人の労働者で構成されるEU最大の食品製造業団体。取引量はEU全農産物の70%を占める。
 

欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)

 欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とは、EU加盟国の3万5000社の農産物貿易事業者で構成されるEU団体。穀物、飼料、砂糖、ワイン、食肉、乳製品、青果、卵などの農産物を対象としている。
 

欧州食品・農業・観光関係労働組合連合会(EFFAT)

 欧州食品・農業・観光関係労働組合連合会(EFFAT)とは、食品・農業・観光業の2200万人以上の労働者の利益ために活動する、欧州35カ国の120の労働組合(組合員260万人)の連合組織である。

【国際調査グループ】

2 (令和2年12月28日付)BREXIT移行期間終了後の英EUの通商・協力について双方が合意

 英国および欧州委員会は12月24日、英国のEU離脱(BREXIT)移行期間終了後の通商・協力について合意したとそれぞれ発表した。2016年に英国が実施したEU離脱に関する国民投票以降の長きにわたる両者間の交渉は、移行期間終了が12月31日と間近に迫る中でようやく決着した。
 合意内容のうち自由貿易協定(FTA)に関しては、原産地規則を満たすことを要件に、全品目で関税が撤廃され、関税割当も設けないこととなった。一方、英国がEU単一市場から外れるため、北アイルランドを除く英国とEU間の貿易において衛生植物検疫(SPS)措置が適用され、2021年7月にかけてシステムの変更や衛生証明書の導入が段階的に行われる。

 農業・食品業界も、今回の待ちに待った合意発表を受け、直ちに反応した。EU最大の生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)は、欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)と連名で同日、EU農業・食品部門への大打撃を直前に回避できたことを歓迎すると声明を発表した。
 また、2021年1月1日からの移行を確実なものとするよう迅速な対応を要請するとともに、対応が不可能であれば、国境およびサプライチェーンの混乱は必至であり、特に多くの雇用と農産物の価格および安定供給を危機にさらすとして、50億ユーロ(6350億円:1ユーロ=127円)の予算が組まれているBREXIT準備金の活用を求めた。さらに、適用されるSPS措置への人的、技術的、財政的支援の要求の他、英EU間に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生時に措置し、奏功した物流優先レーン(グリーンレーン)(注)の維持などを求めた。

(注) 物流優先レーンとは、農産品を含む食品の優先的な流通のため、各加盟国との連携により「グリーンレーン(優先レーン)」を創設し、EU単一市場の機能を担保するもの。同レーンは、指定の主要国境検問所に設けられ、検査は15分以内に実施される。

 なお欧州側では、今回の合意は欧州理事会の決定により暫定的に2021年1月から適用され、2021年2月中を目途に欧州議会による批准手続きを経て発効する見込みとなっている。

【参考:これまでの英国・EU交渉関連情報】
・農業・食品等関係団体、英・EU交渉に5つの緊急要請(EU)(欧州1番の情報)
 https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002841.html
・農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTAの質の高い合意のほか、BREXIT調整準備金の活用も求める(EU)【海外情報 令和2年10月1日発】
 https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002783.html
・EU乳業団体、進展の見られない英国との交渉に懸念を表明し、英・EU間のサプライチェーンが維持されるよう要請【海外情報 令和2年6月29日発】
 https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002739.html
・EU農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTA交渉が難航していることにリスクが高まっていると懸念を表明。「合意なし」の場合、移行期間の延長、代替案の措置を要求【海外情報 令和2年6月11日発】
 https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002724.html

【国際調査グループ】

3 (令和3年1月6日付)欧州委員会、持続可能性に焦点をおいた2021年農産品プロモーションプログラムに1.8億ユーロ措置も、業界団体らは反発(EU)

 欧州委員会は12月17日、2021年における欧州連合(EU)域内外での農産品プロモーションプログラムとして1億8290万ユーロ(234億1120万円:1ユーロ=128円)の予算を措置したと発表した(表)。
 2021年のプログラムは、欧州委員会が2019年12月に発表し、最優先課題として進める持続可能な社会への移行を目指す欧州グリーン・ディール(参考)に貢献するよう、有機、果実・野菜、持続可能な農業による農産品を優先事項とした。また、農産品の国際市場が拡大していることを好機として、EU産品の国際競争力を向上させ、品質や持続可能性の面でEU農業に高い基準が採用されていることへの認識を高めることも目的としている。なお、予算全体は前年(2億90万ユーロ(257億1520万円))からやや減少した。

 
 欧州委員会のヤヌシュ・ボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員は、欧州の農業は国際的にも品質や安全性に高い評価があるものの「岐路に立たされている」とし、「欧州農業は今、持続可能性への注力を高める必要がある」とした。また、持続可能な農業は、持続可能な方法で生産された食品への要求を高めている消費者にメリットをもたらすだけでなく、生産品に付加価値を与えることで生産者にもメリットをもたらすものであると、このプログラムの必要性を説明した。

 今回の予算の約半分(8610万ユーロ(110億2080万円)。表の※印)は、欧州グリーン・ディールの農業・食品部門の戦略であるFarm to Fork(農場から食卓まで:F2F)戦略(参考)に沿ったものに充てられている。これには、有機をはじめとした持続可能な農業や気候変動・環境に対する農業・食品部門の役割をEUや世界の消費者に情報提供することなども含まれる。また、域内向けとして、F2F戦略で目標とするバランスの取れた健康的な食生活への移行のため、新鮮な果実や野菜の消費拡大を目的としたプロモーションも含まれている。

 その他、域外向けには、品質や特色ある産品のプロモーションのほか、欧州委員会が高い成長可能性の見込める市場とする日本、韓国、カナダ、メキシコなどに焦点を当てたプロモーションを対象とし、EU農産品の競争力を高め、これらの市場におけるシェア拡大を目指すとしている。
 なお、具体的な農産品プロモーションプログラムに対する提案の募集は、2021年初頭に公告される予定である。提案は、貿易機関、生産者団体、農業団体などの広範囲の組織が応募可能となっている。

 一方、EU最大である農業者団体欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)(参考)は、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)(参考)など農業・食品等関係9団体と連名で、同予算措置について反発した。
 COPA-COGECAら業界10団体は、持続可能な農業の推進には消費者の需要などから一定の理解を示すも、今回の予算措置が、現在の有機市場シェアが全体の8%である中にあって、予算の約3割程度を有機という単一的な農法に焦点をおいていることは、経済的にも環境的にも非効率であるとした。市場の実態に合っておらず、他の持続可能な生産方法のさらなる貢献を妨げる可能性があり、持続可能な農業を推進するという政策全体への効果を低下させるとも指摘した。また、EU農業予算全体が前年から4%削減される中にあって、同プログラム予算がそれを上回る同9%程度削減されたことに対しても、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が引き続き、かつ、英国のEU離脱(BREXIT)の移行期間終了が2020年12月31日に迫り、業界が多くの支援を必要とする中、特に受け入れ難いとした。

【参考:欧州グリーン・ディールおよびF2F戦略について】
・EUの「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略について〜2030年に向けて、持続可能性(サステナビリティ)を最優先課題とするEU農業・食品部門〜(「alicセミナー」2020年12月14日)
 https://www.alic.go.jp/content/001184978.pdf

・持続可能性(サステナビリティ)を最優先課題とするEU農畜産業の展望〜2019年EU農業アウトルック会議から〜(「畜産の情報」2020年3月号)
 https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001030.html

・欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)とは、EU加盟国の2300万人以上の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および2万2000の農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織されたEU最大の農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。

・欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とは、EU加盟国の3万5000社の農産物貿易事業者で構成されるEU団体。穀物、飼料、砂糖、ワイン、食肉、乳製品、青果、卵などの農産物を対象としている。

【国際調査グループ】