畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 令和3年度の輸入枠数量が決定

国内の需給動向【牛乳・乳製品】 畜産の情報 2021年3月号

令和3年度の輸入枠数量が決定

印刷ページ
都府県の生乳生産量も3カ月連続で増加
 令和2年12月の全国の生乳生産量は、62万2126トン(前年同月比1.0%増)と前年同月をわずかに上回った(図19)。地域別に見ると、北海道は34万8140トン(同1.4%増)と平成31年3月から22カ月連続で前年を上回って推移している。都府県は27万3986トン(同0.5%増)と、令和2年10月から3カ月連続で前年同月を上回っている。
 このような状況から、2年(1〜12月)の生乳生産量は、北海道は415万3902トン(前年比2.6%増)、都府県は328万4497トン(同0.6%増)となり、全国では743万8399トン(同1.7%増)となった。


 
牛乳等向け生乳処理量、3カ月ぶりに前年同月比増
 令和2年12月の生乳処理量を用途別に見ると、牛乳等向けは32万817トン(前年同月比1.1%増)と3カ月ぶりに前年同月を上回った。新型コロナウイルスの感染者数が再び増加する中、業務用向けの減少(同13.6%減)が続く一方で、家庭内消費の増加などを追い風に、直接飲用等向け(注)は29万5123トン(同2.6%増)と前年同月をわずかに上回っている。
 乳製品向けは、クリーム向けが6万3258トン(同2.0%減)と前年同月をわずかに下回ったものの、脱脂粉乳・バター等向けが15万4283トン(同5.2%増)と前年同月をやや上回ったことなどから、29万7629トン(同0.9%増)と前年同月をわずかに上回った(農林水産省「牛乳乳製品統計」、農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」)。
 例年、牛乳の不需要期となる12月は、乳製品向け処理量が大幅に増加する傾向にあるが、昨年12月は、巣ごもり需要を背景に家庭での牛乳消費が堅調であったため、当初関係者の間で危惧されていた処理不可能乳の発生といった事態を招くことなく、むしろ生乳需給はひっ迫気味で推移した。

(注) 直接飲用等向けは、牛乳等向けから業務用向けを引いて算出。

バター在庫量は、高水準ながらも徐々に減少
 当機構が国内乳業メーカーなど13社を対象に実施している「形態別バターの需給量」調査によると、バターの在庫量は令和2年8月末に3万7797トンと高水準となったが、その後はこれをピークに徐々に減少し、バターの最需要期である12月末は3万3395トン(前年同月比47.7%増)となった(図20)。

 
 形態別に見ると、バター全体の在庫量の過半を占める業務用のバラ(1個当たり20〜25キログラム)は、1万9300トン(同43.8%増)と前年同月を大幅に上回った。内訳は、国産がバラ全体の約88%を占め、1万6912トン(同72.9%増)と前年同月を大幅に上回る一方、外国産は2388トン(同34.5%減)と前年同月を大幅に下回っている。
 また、バター全体の在庫量の約3割を占める、業務用のポンド・シート等である小物(同450グラム〜5キログラム)も、1万2328トン(同54.0%増)と前年同月を大幅に上回った。内訳は、国産が小物全体の約95%を占め、1万1752トン(同59.8%増)と前年同月を大幅に上回る一方、外国産は576トン(同11.7%減)と前年同月をかなり大きく下回っている。
 なお、需要が堅調な家庭用の在庫量は、1767トン(同50.4%増)であった。
 例年、バターの生産量は飲用需要が低下する冬場から春先にかけて増加するが、2年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う同年4月の緊急事態宣言の発令以降、学校給食用牛乳や業務用乳製品の需要が落ち込み、保存が利くバターなどの生産に生乳が仕向けられたことにより、例年になく生産量が急増した。また、インバウンド需要の喪失や外食・土産品需要の減少を背景に、業務用を中心にバター出回り量(消費量)も低調に推移したため、バラや小物の在庫が高水準で推移している。
 当機構としては、国家貿易品目であるバターおよび脱脂粉乳等について、国際約束に基づき国内需要に見合った輸入の実施に努めるとともに、農林水産省からの要請を受け、COVID-19の拡大に伴う緊急対策として、生乳需給の改善などを図るための各種対策を実施しているところである。こうした中で、令和2年度第三次補正予算の成立を受け、国産バターなどの需要拡大のための国産乳製品需要拡大緊急対策事業(注)を実施することとしている。

(注) 乳業者団体等が国産需要の拡大を図るため、新たな業務用需要に対してバターおよび脱脂粉乳を活用する取り組みを支援する事業。

生乳生産量は、3年連続増加の見通し
 一般社団法人Jミルクは令和3年1月29日、「2021年度の生乳及び牛乳乳製品の需給見通しと課題について」を公表した。これによると、3年度の生乳生産量は750万6000トン(前年度比0.9%増)と、3年連続の増加を見込んでいる。地域別に見ると、北海道では2歳以上の乳用雌牛が年間で約1万2000頭増加することなどにより、424万6000トン(同2.1%増)と増加する一方で、都府県では、同乳用雌牛頭数は同程度の水準で推移し、325万9000トン(同0.6%減)とわずかに減少する見込みとなっている(表)。 
 生乳の用途別処理量については、飲用等向けが410万7000トン(同0.6%増)、乳製品向けが335万4000トン(同1.3%増)と、いずれもわずかに増加するものと見込んでいる。乳製品向けのうち、脱脂粉乳・バター等向けは171万2000トン(同0.6%増)と前年度をわずかに上回り、また、生クリーム等向けは、前年の業務用需要減少の反動から、123万2000トン(同2.6%増)とわずかな増加を見込んでいる。


 
令和3年度の輸入枠数量、バター6400トン、脱脂粉乳750トン
 農林水産省は1月29日、3年度の指定乳製品等の輸入枠数量を公表した。これによると、上述のような高水準にあるバターおよび脱脂粉乳の在庫量の存在を背景に、カレントアクセス数量である生乳換算13万7202トンに相当する乳製品の輸入を行うこととし、バターは2年度から7600トン減の6400トン、脱脂粉乳は日米貿易協定に基づく750トンなどの数量が示された。当機構は、今回設定された輸入枠数量に基づき、バターは毎月、脱脂粉乳は需給状況に応じて輸入入札などを実施する予定である。

(酪農乳業部 鈴木 香椰)