畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 成牛と畜頭数が減少する一方、肉牛取引価格は過去最高を更新

海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2021年3月号

成牛と畜頭数が減少する一方、肉牛取引価格は過去最高を更新

印刷ページ
成牛と畜頭数、前年同月の約6割で推移
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、成牛と畜頭数は減少傾向で推移しており、特に2021年に入ってからは、1月第2週目は6万7510頭(前年同月同週比43%減)、同月第3週目は8万6764頭(同37%減)と前年同月の約6割となっている(図3)。現地報道によると、いまだ干ばつの影響はあるものの、降雨量の回復など飼養環境の改善のほか、牛群再構築の動きなどを背景にと畜頭数は減少傾向にある。また、食肉処理施設の操業日数も減少基調となっており、従業員の勤務時間にも制約がかかるなど、施設運営が困難な状況にあることから、今後食肉処理施設の閉鎖が危ぶまれる状況となっている。
 

 
東部地区若齢牛指標(EYCI)価格、過去25年間で最高値を更新
 肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2020年末にいったん下落したものの、その後は上昇し、1月27日に1キログラム当たり888.25豪セント(719円:1豪ドル=81円)と過去25年間での最高値を記録した(図4)。MLAは、肉牛の価格高騰により、主要市場であるクイーンズランド(QLD)州の家畜市場の取引頭数は、前年比で69%の大幅増となっており、記録的な肉牛価格を背景に、今後も生産者による牛の売却が加速するとしている。

 
2020年の牛肉輸出量は前年比15.4%減
 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2020年12月の牛肉輸出量は、と畜頭数の減少に伴う牛肉生産量の減少により8万5044トン(前年同月比26.5%減)と11カ月連続で前年同月を下回った(表2)。同年1〜12月の累計も103万9410トン(前年比15.4%減)と前年をかなり大きく下回った。

 
 輸出先別に見ると、最大の仕向け先である日本向けは、同年12月に2万2575トン(前年同月比6.3%増)とかなりの程度増加したものの、5〜11月の輸出量が前年同期を下回っていたことから、年間累計では26万9302トン(前年比6.3%減)とかなりの程度減少した。
 日本に次いで多い米国向けは、同年12月には1万5201トン(前年同月比47.1%減)と大幅に減少し、年間累計でも21万1740トン(前年比15.9%減)とかなり大きく減少した。MLAは、2020年後半に米ドルに対し豪ドルが上昇し、米国向けの牛肉輸出価格を押し上げたことや、豪州産牛肉の供給余力不足を要因に挙げている。
 3番手の輸出先である中国向けは、同年12月は1万5149トン(前年同月比55.8%減)と7カ月連続で前年同月を大幅に下回り、年間累計でも前年比34.5%減と大幅に減少した。従来より中国における牛肉需要は増加基調にあり、この傾向は今後も継続するものと見込まれているが、近年ではアフリカ豚熱や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などにより、中国国内の食肉需給に変化が生じている。また、依然として一部の牛肉処理施設における中国向け輸出制限の解除のめどが立っていないことから、その動向を注視する必要がある。
 韓国向けは、同年12月は1万6391トン(前年同月比10.2%増)とかなりの程度増加したものの、年間累計では16万850トン(前年比0.9%減)とわずかに減少した。

(調査情報部 国際調査グループ)