2020年1〜11月の豚肉生産量は前年同期比8.8%増
チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2020年1〜11月の豚肉生産量は、前年同期比8.8%増の52万9460トンと前年同期をかなりの程度上回った(図8)。中国からの強い需要を背景として輸出向けが増加しているため、生産者の増産意欲が高まっているものとみられる。
近年の状況を見ると、チリでは2012年まで生産拡大が進んでいたが、環境問題により2013年3月に国内最大の養豚企業であるアグロスーパー社の母豚15万頭規模の農場が閉鎖に追い込まれて以降、生産量はおおむね減少傾向で推移していた。依然として生産拡大は限られた状況であるものの、養豚企業が繁殖成績や飼料要求率の改善に注力したことに加え、大手企業が導入している種豚の遺伝的改良が進んだことなどから、2018年に生産量が増加に転じ、減少傾向に歯止めがかかった状況となっている。
2020年1〜11月の輸出量、中国向けの割合が7割強に上昇
2020年1〜11月の豚肉輸出量(冷蔵・冷凍)
(注1)は、前年同期比36.1%増の21万2231トンと大幅に増加した(表5)。年間輸出量は、2018〜19年に続けて過去最高を更新していたが、2020年は11月までの累計がすでに2019年の年間輸出量を超えており、3年連続で過去最高を更新することが確実となっている。
輸出先別に見ると、最大の中国向けは同117.6%増の15万5149トンと約2.2倍になっており、2019年に続いて急増した。同国では、アフリカ豚熱の影響で豚肉生産量が減少し、需給ギャップを解消するべく輸入食肉の需要が高まっていたことから、2019年後半以降、同国向け豚肉輸出量が増加していた(図9)。2020年2月には、同国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により港湾での物流が停滞したことなどから一時的に輸出量が減少したものの、その後回復し、前年を大きく上回っている。この結果、2020年1〜11月の総輸出量に占める同国向けの割合は、前年を大きく上回る73.1%となった。また、同国向け豚肉輸出単価は、輸出量の増加と同じく2019年後半から上昇し、2020年2月以降低下したものの、8月以降再び上昇に転じており、同年1〜11月の平均単価は前年同期を3割程度上回っている。
韓国および日本向け輸出量は、それぞれ同6.8%減、同14.0%減と前年同期を下回っているものの、ロインやバラ、肩ロースなどの部位を中心に毎月1000〜2000トン台の水準で輸出されており、輸出単価も比較的安定している。
一方、ロシア向け輸出量は、同92.7%減の1205トンと前年同期の1割以下に減少した。ロシア向けは、2019年前半まで一定量輸出されていたが、需要の背景にあった同国におけるブラジル産豚肉の輸入停止措置(2017年12月〜18年10月)が解除されたことに加え、中国からの需要が強まったためとみられる。
(注1) チリにおける豚肉輸出量のほとんどは冷凍品が占めている。
2020年1〜11月の輸入量、COVID-19などの影響で前年同期を下回る
2020年1〜11月の豚肉輸入量(冷蔵・冷凍)
(注2)は、前年同期比10.2%減の8万4695トンと、かなりの程度減少した(表6)。これは、COVID-19の影響により国内の経済状況が悪化したことや輸入単価が上昇したことなどにより国内需要が減少したためとみられる。
輸入先別に見ると、合計で輸入量全体の9割を占める米国およびブラジルは、それぞれ同3.2%減、同8.9%減といずれも前年同期を下回った。その他の国からの輸入もハンガリーを除き減少した。
チリでは、ブラジル産などの安価な輸入品を国内消費向けとして加工品に仕向け、高級部位を積極的に輸出していくという動きが進んでいると言われている。今後は、環境問題により生産拡大が限られる中、輸出市場におけるニーズや国内消費の動向に応じて輸入が継続するものとみられる。
(注2) チリにおける豚肉輸入量のほとんどは冷凍品が占めている。
(調査情報部 井田 俊二)