鶏肉生産量へのCOVID-19の影響は限定的
主幹産業である畜産業に関する資材などの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による輸送の停滞を回避するタイ政府の政策が奏功し、2020年の鶏肉生産量へのCOVID-19の影響は限定的であった(図14)。
鶏肉価格は高値を維持
2020年上半期は、COVID-19の外出制限による外食消費の減退などを受け、鶏肉価格は一時的に下落した。しかし、同年下半期は、外出制限の緩和や、鶏肉が牛肉などと比較して安価なたんぱく源として定着しており需要が高かったことを受け、鶏肉価格は高水準で推移した(図15)。
2020年末からCOVID-19が再拡大し、県をまたぐ移動が再び制限されたが、鶏肉需要は同年上半期ほどの影響は受けないものと考えられている。
中国向け冷凍鶏肉輸出が大幅に増加
2020年1〜11月の冷凍鶏肉輸出量は、前年同期比11.0%増の30万5676トンであった(表8)。
COVID-19により一部国境を閉鎖したラオス向け輸出は大幅に減少した。その他多くの国向けの輸出が減少しているが、アフリカ豚熱の発生により、豚肉から鶏肉へ消費のシフトが見られた中国への輸出が、大幅に増加した。同じ理由で香港向け輸出も増加していると考えられる。
中国では、豚肉生産が回復基調にあり、鶏肉も増産されて鶏肉価格がアフリカ豚熱発生前の水準となっているため、今後の輸入は落ち着くと考えられる。
鶏肉調製品輸出は外食需要の影響を受け減少
COVID-19により輸出先で外食需要が落ち込んだため、鶏肉調製品全体で輸出量が減少した。2020年1〜11月の鶏肉調製品輸出量は、日本をはじめ、主要輸出先で軒並み減少したことを受け、前年同期比7.3%減の50万4320トンであった(表9)。いまだに世界的にCOVID-19の収束は見えず、非常事態宣言の発出や都市封鎖が行われている国もあるため、今後も外食需要の回復が見通せない中、鶏肉調製品の輸出は伸び悩むと考えられる。
(調査情報部 寺西 梨衣)