再稼働に先立ち、京都府をはじめ全国から集荷する日本産の和牛を世界に発信するために、同年3月、京都市が中心となって市場関係者とともに「京都市中央食肉市場和牛輸出戦略」を策定しました。
この輸出戦略は、新施設稼働後初年度(2018年度)のタイ、マカオの輸出施設認定の取得に始まり、2年目にはシンガポール、3年目には米国、EU、香港へと認定を受けた輸出先国を広げていき、輸出の取扱量を着実に増やしていく計画であり、2022年までの5年間の輸出施設認定取得のスケジュールや目標数量などを定めています。
2018年4月の新施設稼働後は、輸出戦略に基づいてタイ、マカオ向けの輸出施設認定を同年11月に取得しました。当市場からの輸出第一号としてタイ向けに「Kyoto Beef 雅」(京都府内産和牛の輸出ブランド)を出荷した際には、これを記念して出発式を開催しました。この式典では京都市長をはじめ、京都市会議長や京都府知事から輸出への取り組みに対する激励をいただきました。また、マスコミ各社にも取り上げられ、華々しく輸出をスタートすることができました。
本格的に輸出に取り組むことになった2019年は、当市場が内臓肉の処理施設としての認定も受けていることから、タイ向けにブロック肉とともに内臓肉も輸出することで、輸出実績を伸ばすことができました。
輸出戦略では、2019年にシンガポール向けの輸出施設認定を取得し、アジア圏の輸出実績を伸ばすことを想定していましたが、国からの助言もあり、シンガポールに加え米国・EU向けの輸出施設認定を1年前倒しで取得することになりました。
米国・EU向けの輸出認定を取得するに当たって懸念したのは、と畜方法の変更です。従来は牛を寝かせた状態で放血していましたが、牛をつり下げた状態で放血しなければなりません。また、HACCP導入による作業工程の見直しや新たな検査項目の追加など、体制強化や経費の負担増につながる見直しもありました。放血方法の変更に当たり、安全性と作業精度を確保するために必要となる設備改修(放血場所への新たな設備導入)について、当市場と京都市とで連携を図りながら検討しました。その中で大きな課題と考えられたのは、輸出認定を取得している先行施設では、つり下げた状態での放血に変更した場合、シミ(多発性筋出血)の発生が増加するということでした。シミが発生すると枝肉の商品価値を大きく損なうため、出荷者に対して一定の補償が求められます。このため、京都市と協議の上、同年11月に補正予算を成立させ、施設の改修が行われました。当初は安全で効率的なと畜作業が継続できるのか不安がありましたが、作業担当者も徐々に新たな作業工程に慣れ、シミの発生率も全国平均とされている割合よりもかなり低く抑えられています。
そして社員一丸となった取り組みや京都市の支援により、2020年1月に米国、3月にシンガポール、4月にEU向けの輸出認定を取得することができました。全国の食肉の中央卸売市場では初めての取得となり、大変喜ばしく思っております。