豚肉の輸出量、中国向けが首位に
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)の「Livestock and Meat International Trade Data」によると、2020年12月の豚肉輸出量は28万8500トン(前年同月比6.6%減)と前年同月をかなりの程度下回った(表7)。
輸出先別に見ると、中国向けは、同国内の豚肉生産が回復基調にあることから、輸出ペースが鈍化していることに加え、前年同月が高水準であったことから、6万9100トン(同31.4%減)と前年同月を大幅に下回った。次いで多いメキシコ向けは、メキシコペソ高米ドル安基調を追い風にこのところ増加しており、7万6800トン(同13.1%増)と前年同月をかなり大きく上回った。
2020年の輸出量を通年で見ると、全体では330万3200トン(前年比15.2%増)と過去最高を更新した(図9)。
米国食肉輸出連合会(USMEF)によれば、過去最高を更新した大きな要因は、上半期における中国からの需要の急増であり、同国向けは94万800トンと前年比で約2倍と大幅に増加し、メキシコ、日本を抜いて最大の輸出先となった。2位のメキシコ向けは、上半期は減少したものの下半期の増加により、71万600トン(同0.4%増)と前年をわずかに上回った。日本向けは54万4900トン(同4.6%増)となり、USMEFは2020年1月に発効した日米貿易協定が追い風になったとしている。
今後の見通しについて、USDAでは、中国向けの高水準の輸出は続くものの、2020年の水準には達しないと見込んでいる。一方、メキシコ向けは、同年下半期の勢いが継続し、好調に推移すると見込んでいる。
中国向け、冷凍・枝肉での輸出が2割
2020年の米国における豚肉輸出量を形態別に見ると、全体では冷凍・その他(部分肉など)の割合が48%と最も高く、次いで冷蔵・骨付き肉が20%、冷蔵・その他(部分肉など)が16%、冷凍・骨付き肉が9%、冷凍・枝肉が7%、冷蔵・枝肉が0.3%となった(図10)。
輸出先別に見ると、最大輸出先の中国向けは、ほぼ全量が冷凍であり、他国向けと比べると、冷凍・枝肉の割合が21%と突出して高い。過去5年間では、2018年まで冷凍・枝肉の同国向け輸出実績はほとんどなかったものの、2019年に44%、2020年に21%と急拡大した。中国国内でのアフリカ豚熱の流行による生産減に伴い、特定の部位ではなく、すべての部位で供給が不足したことに加え、米国の食肉処理場において、トランプ前政権の移民政策や新型コロナウイルス感染防止対策(作業中における従業員間の社会的距離の確保など)により、労働力不足が続いていたことが、脱骨作業が不要な枝肉輸出の追い風となったとみられる。
メキシコ、カナダ向けについては、米国と地理的に近いことなどから、冷蔵の割合が他国と比べて高い。メキシコ向けは、同国内で需要が大きいももなどの骨付き肉が78%を占めた。
日本向けは、ほぼ全量が部分肉であり、他国と比べて冷蔵、冷凍の割合が拮抗しており、テーブルミートから加工用まで幅広い用途に仕向けられている。
その他の主要国向けは、比較的安価な冷凍・その他(部分肉など)が8割以上を占めた。
(調査情報部 河村 侑紀)