畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 1〜11月の豚肉生産量は前年同期比増

海外の需給動向【豚肉/EU】  畜産の情報 2021年4月号

1〜11月の豚肉生産量は前年同期比増

印刷ページ
ドイツの豚肉生産量、前年同月をやや下回る
 欧州委員会によると、2020年11月の豚肉生産量(EU27カ国)は、前年同月比4.8%増の205万2820トンとなった(図11)。と畜頭数は同3.9%増の2170万頭、1頭当たり枝肉重量は同0.8%増の94.6キログラムとなった。主要生産国を見ると、多くの国で前年同月を上回っており、スペインは同16.1%増、デンマークは同12.9%増と2桁の増加となった。一方で、EU最大の豚肉生産国であるドイツは同4.6%減と、イタリアの同11.7%減とともに前年同月を下回った(表8)。1〜11月の累計でもスペイン、オランダ、デンマークが前年同期を上回った一方で、ドイツ、フランス、ポーランド、イタリアは前年同期を下回った。

 
 
 
EUの豚枝肉卸売価格、月平均は9カ月連続で前年同月を下回る
 欧州委員会によると、2021年1月のEUの豚枝肉卸売価格は、前年同月比31.2%安の100キログラム当たり127.9ユーロ(1万6755円:1ユーロ=131円)となった。同価格は、2020年9月にドイツの野生イノシシでアフリカ豚熱が確認されたことを受けて、下落傾向となり、月平均では9カ月連続で前年同月を下回った。
 なお、ドイツでは3月9日現在、飼養豚でのアフリカ豚熱の発生は確認されていないものの、野生イノシシでの発生件数は、825件にまで増えている。アフリカ豚熱発生以降、ドイツ産豚肉は、主要輸出先であった中国などから輸入停止措置を受けたため、EU域内に振り向けられ、豚肉が供給過多になるなど、同価格への下落圧力となっていた。現地情報によると、ドイツの養豚場でと畜適期に達した肥育豚が滞留し、一時は100万頭超となっていたが、現在は20万頭まで減少しており、価格下落への影響は少なくなったとしている。
 また、価格動向を週ごとに見ると、2月1日の週以降、3週連続で前週を上回って推移するなど回復傾向を示している(図12)。
 

 
スペインのEU域外向け輸出量、前年比2.1倍に増加
 中国などでドイツ産豚肉の輸入停止措置が継続している中、EU域外向けの輸出量を増加させているのがスペインである。同国は、前述の通り豚肉生産量も増加傾向で推移している中、EU域外向けの輸出量も増加傾向となっている。ドイツが12月のEU域外向け輸出量を前年同月比67.5%減の2万1775トンと大幅に減らしたのとは対照的に、スペインは、14万5646トン(同2.1倍)と大幅に増加した(図13)。2020年通期では、ドイツが59万7552トン(前年比6.0%減)と前年を下回った一方で、スペインは129万9291トン(同62.0%増)と前年を上回った。 
 現地情報によると、スペインからアジアへの輸出も引き続き好調となっているとのことである。
 一方、シンガポールは2月25日、ドイツでのアフリカ豚熱について地域主義(注)を適用することを発表した。今後、ドイツ産豚肉の輸入制限を講じている地域で同様の動きが広がっていくかが注目される。
(注) 地域主義とは、疾病発生国であっても、清浄性(当該疾病の感染の可能性がないこと)が確認できる地域からの輸入であれば認めるもの。


(調査情報部 小林 智也)