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海外の需給動向【鶏肉/ブラジル】  畜産の情報  2021年4月号

2020年の鶏肉輸出量、前年比1.3%減

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中国向け鶏肉輸出量は前年に続き増加
 ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2020年の鶏肉輸出量は、前年比1.3%減の389万9504トンと前年をわずかに下回った(表9)。これは、年間を通して米ドルに対する現地通貨レアル安が続き、輸出に有利な状況となったものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による外食産業を中心とした需要の低迷、飼料価格高による生産コストの上昇で価格競争力が低下したことなどが影響を及ぼしたとみられる(図14)。輸出先別に見ると、全体の2割弱を占める中国向けは、同13.9%増の67万2662トンと前年をかなり大きく上回った。中国では、アフリカ豚熱の発生に伴う代替需要の増加を背景に、前年に続きブラジル産鶏肉への引き合いが強く、毎月5万トン前後が輸出された。一方、その他の主要輸出先である中東のサウジアラビアやアラブ首長国連邦向けは、それぞれ同1.2%減、同12.4%減と前年を下回った。また日本向けも、COVID-19の影響で外食需要が落ち込んでいることから同4.1%減となった。


 

 

ブロイラー生産コスト、飼料穀物高により1年間で52%上昇
 ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)養鶏・養豚センター(CIAS)によると、最大生産州であるパラナ州におけるブロイラー生産コスト指数(2010年1月の生産コストを100とした指数)は、2018年4月から2019年9月ごろまで220ポイント前後で推移していたが、その後上昇傾向で推移し、2021年1月には354.1ポイント(前年同月比52.0%高)に上昇した(図15)。これは、中国からの飼料穀物に対する需要が強いことに加え、国内においても主に輸出向け肉畜生産者からの需要が強く、ブラジル国内の飼料穀物価格が上昇したためとみられる。ブロイラー用飼料の主原料となるトウモロコシの卸売価格(マットグロッソ州)は2019年10月以降上昇傾向で推移し、2021年1月には60キログラム当たり67.4レアル(約1308円:1レアル=19.4円)を記録し前年同月と比較して66.5%上昇した(図16)。




 
 なお、国内での飼料穀物価格の高騰対策として、少量ではあるが、メルコスール加盟国(アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ)以外の南アフリカや米国からトウモロコシが輸入されており、これらの国に対する関税を無税とする措置(注)は、2021年3月31日まで継続する予定である。

(注) 『畜産の情報』2021年1月号「国内飼料穀物価格を反映し、ブロイラー生産コストが大幅に上昇」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001465.html)を参照されたい。

鶏肉卸売価格は急速に上昇後、高値で推移
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、鶏肉卸売価格は、ブラジルでCOVID-19が拡大し始めた2020年3〜5月にかけて下落したが、ブロイラー生産コストが大幅に上昇したことや国内における鶏肉需要が堅調であることなどを背景として上昇傾向に転じ、その後急速に値上がりした(図17)。このため、2020年11月の鶏肉卸売価格(名目価格)は、統計が開始された2004年以降の最高値となり、その後も1キログラム当たり6レアル(約116円)前後の高値で推移している。

 


(調査情報部 井田 俊二)