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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】 畜産の情報  2021年4月号

EUの年間生乳出荷量は増加傾向で推移

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2020年の生乳出荷量は前年比1.2%増
 欧州委員会によると、2020年12月の生乳出荷量(EU27カ国)は、前年同月並みの1155万2520トン(前年同月比0.3%増)となった(図19)。また、同年1〜12月の累計は、1億4460万2310トン(前年比1.2%増)となった。生乳出荷量は、2020年の年初から飼料価格が安かったことで濃厚飼料の給与が増えたことや、牧草生育が良好だったこともあり、2020年5月を除いて、すべての月で前年同月を上回って推移した。 
 また、EUの2020年の生乳出荷量は、EU27カ国合計の数値が継続して入手できる2014年以降は6年連続の増加となった(図20)。 
 2020年の出荷量を国別に見ると、イタリア(前年比0.6%減)が前年を下回ったものの、ドイツ(同0.3%増)、フランス(同0.5%増)、オランダ(同1.1%増)、ポーランド(同2.3%増)などの主要生産国では、前年を上回った(表13)。





 
 また、ポーランドは、近年、酪農家の規模拡大や農家の生産性向上と競争力強化を図るための充実した支援の下、生乳出荷量の増加傾向が続き、上位5カ国の中では増加率が最も大きくなっている(注1)

(注1) ポーランドの酪農については、『畜産の情報』2021年1月号「ポーランドにおける牛乳・乳製品の生産および輸出動向について」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001472.html)を参照されたい。

アイルランド、デンマークで飼養頭数が増加
 欧州委員会によると2020年12月時点のEUの乳用経産牛飼養頭数は、経産牛のと畜増加に伴う飼養頭数の減少見込みにより、前年比1.1%減となった(表14)。主要生産国で飼養頭数が増加したのはアイルランド(前年比2.1%増)とデンマーク(同0.4%増)のみであり、ドイツ(同2.2%減)、フランス(同1.6%減)、ポーランド(同1.9%減)などでは減少した。また、近年の飼養頭数は、環境規制などへの対応もあり、減少傾向となっている。一方で、経産牛1頭当たりの泌乳量は増加傾向で推移しており、欧州委員会が12月に公表した農畜産物の中期見通しの中でも、今後、飼養頭数は減少することが見込まれるものの、生産性の向上によって生乳生産量は増加することが見込まれている(注2)
  なお、飼養頭数が増加しているアイルランドは、ポーランド同様、近年、生乳出荷量の増加傾向が続いている国の一つであり、アイルランド農業食料省が2007〜09年の平均との比較で50%増と掲げた2020年の生乳生産量の目標を2018年に達成するなど、酪農分野の成長が見られている(注3)。また、アイルランド農業食品開発局(Teagasc)が2020年12月に公表した農業経済見通しの中でも、2021年の生乳生産量は飼養頭数の増加に伴い、前年比3%増と見込まれている。

(注2) 本誌89ページ「『次世代』に向かうEU農畜産業の2030年展望〜EU農業アウトルック会議から〜(後編)」を参照されたい。

(注3) 海外情報「アイルランド、2020年の生乳生産目標を2年前倒しで達成へ」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002363.html)を参照されたい。
 

(調査情報部 小林 智也)