2021年の牛肉生産量は増加に転じる見込み
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、ウルグアイの2020年の牛肉生産量は、2016〜18年にかけて雄子牛が多く輸出され、と畜対象となる肥育牛が減少したことから前年比9.3%減の51万トン(枝肉重量ベース)と2年連続で減少するとしている(図9)。また、2021年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後には主要な輸出先への輸出価格が堅調に推移すること、国内肉牛価格が改善すること、と畜対象となる肥育牛が増加することが見込まれることから、同8.8%増の55万5000トンに回復すると予測している。
2020年の中国向け輸出量は減少に転じる
ウルグアイ中央銀行によると、2020年の牛肉輸出量(製品重量ベース)は、生産量減少の影響もあり、30万4543トン(前年比6.3%減)と前年をかなりの程度下回った(表4)。
輸出先別に見ると、最大の輸出先である中国向けは、近年、堅調な国内需要に加え、同国で発生したアフリカ豚熱に伴う代替需要を背景として大幅な増加傾向で推移してきたが、2020年には同20.6%減の18万1703トンと大幅な減少に転じた。これは、中国向け輸出牛肉の中心となる低価格部位において、ブラジルやアルゼンチンなどの牛肉輸出国と比べ価格競争力が劣ることやCOVID-19の影響により外食需要が減少したことなどが要因とみられている。一方、中国に次ぐ輸出先である米国向けについては、同33.5%増の4万3344トンと前年を大幅に上回った。米国では、ウルグアイ産の牧草肥育牛が高値で取引されており、同国向けに設定されている低関税枠(2万トン)を大幅に上回る輸出量となった。このほか、カナダ(同175.6%増)やロシア向け(同8.3倍)が大幅に増加した。
EU向けは、ヒルトン枠(EU規則593/2013)と高級牛肉無税枠(同481/2012。QUOTA481)
(注)での輸出が大半を占めている。ウルグアイのヒルトン枠消化率は、2018/19年度(7月〜翌6月)まで98%以上で推移していたが、EU域内でのCOVID-19の影響などから2019/20年度(70.9%)、2020/21年度(60.6%)とも低下している(表5)。また、2019年2月7日に19年ぶりに輸出が再開された日本向けは、毎月200〜300トン程度輸出され、同42.0%増の3048トンと前年を大幅に上回った。
(注)ヒルトン枠は、EUにおける高級牛肉の低関税輸入枠のことで、放牧肥育であることなどが条件とされている。QUOTA481は、同じく高級牛肉の無税枠で、一定期間の穀物給与などが義務付けられている。
2020年の去勢牛生産者出荷価格は下降傾向で推移
ウルグアイ食肉協会(INAC)によると、去勢牛生産者出荷価格は2019年11月最終週に1キログラム当たり4.339米ドル(約486円:1米ドル=112円)の高値を記録したがその後下落に転じ、2020年は下降傾向で推移した(図10)。2020年12月の第1週目には同3.116米ドル(約349円)となり、2019年11月の高値から約3割下落した。これは、堅調な価格を支えていた中国向け牛肉輸出が減少に転じたことや降水量不足による乾燥気候によりと畜向け出荷頭数が増加したことなどが要因であるとみられている。
(調査情報部 井田 俊二)