ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は3月11日、2020/21年度第6回目となる主要穀物の生産状況等調査結果を公表した(表15、図22、23)。この調査は、春まきの夏作物(大豆、第1期作トウモロコシなど)や秋まきの冬作物(第2期作・第3期作トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦など)の生産予測を毎月公表するものである。
トウモロコシ生産量、堅調な市場価格を背景に2カ月連続で上方修正
2020/21年度(第1〜第3期作)のトウモロコシ生産量は、前回より258万7100トン増と2カ月連続で上方修正され、前年度比5.4%増の1億806万8700トンとなり、統計を取り始めて以来最大となった2019/20年度をやや上回ると見込まれている。生産量は、この2カ月間で575万5500トン上方修正された。これは、国内外の需要が強く市場価格が堅調であることを背景として、生産者の作付け意欲が強いためとみられる。
生産量全体の2割強を占める第1期作は、単収の減少により前回より13万8700トン下方修正され、同8.6%減の2349万500トンと前年度をかなりの程度下回ると見込まれている。主要な生産地では、播種時の降水量不足や不規則な降雨による作業の遅れや作付け後の生育状況に影響が見られた。特に主産地である南部地域では、いわゆるラニーニャ現象による不安定な天候や病害虫の発生により単収が前年を大きく下回ると見込まれている。また全体の7割強を占める第2期作は、作付面積の増加により前回より272万5700トン増と2カ月連続で上方修正され、同10.3%増の8280万2300トンと前年度をかなりの程度上回ると見込まれている。作付け作業は、大豆の収穫作業の遅れや悪天候により大幅に遅れ、作付け適期とされる2月末を過ぎてからも作業が続けられている。このため、作付けが遅れた作物については、今後収穫までに霜害などの気候リスクが高まることが指摘されている。
大豆生産量、収穫作業の遅れはあるものの2カ月連続で上方修正
2020/21年度の大豆生産量は、作付面積の増加により前回より131万4600トン増と2カ月連続で上方修正され、前年度比8.2%増の1億3513万1600トンと前年度をかなりの程度上回り、前年度の記録を更新し過去最大になると見込まれている。
2020/21年度は、大部分の生産地域において9〜10月の降水量が過去の平均を大きく下回ったことから播種時期が大幅に遅れた。また、主要な生産地域において収穫期の降雨により農作業の遅れが生じたこと、一部の生産地域において日照不足により生育の遅れが生じたことなどが収穫の大幅な遅れにつながった。このため、大豆の収穫後に行われる第2期作トウモロコシやその他の作物の作付けスケジュールにも影響を及ぼす状況となっている。
地域別に見ると、最大の生産州である中西部のマットグロッソ州では、2月末時点の収穫面積が56.0%と前年同期(86.9%)に比べて大幅に遅れている。これは、前述の気候要因に加え、収穫作業が集中することによりアマゾン川の支流の河川港において輸送用トラックが不足し物流が停滞したことを要因として挙げている。ただし、同州における作物の単収や品質は良好な状況にあるとしている。また、主要生産州である南部のリオグランデドスル州では、干ばつにより2019/20年度の生産量が大幅に減少したものの、今年度は気候などの生産条件に恵まれ大幅に回復すると見込まれている。
(注)今回の発表では、2020/21年度のブラジルの大豆需給動向に関するデータは掲載されていない。
(調査情報部 井田 俊二)