(1) 生産量
ア 小麦
2020/21年度の小麦生産については、作付面積は1299万ヘクタール(前年度比27.1 %増)と大幅に増加する見込みである(図13)。また、同年度の生産量は3334万トンと、19/20年度の1517万トンという大きな落ち込みから回復し、前年度比2.2倍と倍増することが見込まれている。これは、ラニーニャ現象に起因したまとまった降雨により、干ばつの影響が緩和され、特にNSW州とVIC州で記録的な生産量となったためである。単収についても、19/20年度の1ヘクタール当たり1.5トンから20/21年度は同2.6トンと前年度比72.9%増となる見込みである。
21/22年度以降は、COVID-19からの経済の回復や降雨量など、四つのシナリオの平均的な結果を基に予測されているが、21/22年度の生産量は2500万トン、22/23年度以降は2250万〜2300万トンの間で推移するものと見込まれている。
イ 大麦
2020/21年度の大麦生産についても、小麦と同様、ラニーニャ現象による降雨の影響を受け、作付面積は442万ヘクタール(前年度比9.2%増)とかなりの程度増加し、単収も1ヘクタール当たり3.0トンと過去20年でも最高の単収となり、生産量も1309万トン(同45.5%増)と大幅に増加すると見込んでいる(図14)。
21/22年度の生産量は966万トン(同26.2%減)と大幅に減少すると見込まれており、その後も900万トンを下回る生産量で推移するとみられているが、特に中国が豪州の大麦に課した輸入関税
(注4)によりWA州の作付面積が減少することが予測されている。
(注4)2020年5月19日より、中国が豪州から輸入される大麦に対し、アンチダンピング関税として73.6%、反補助金関税として6.9%、合計で80.5%の追加関税を課しており、5年間継続するとしているもの。
(2) 輸出量
ア 小麦
2020/21年度の小麦の輸出量は、生産量の大幅な増加により、2136万トン(前年度比2.3倍)と前年度から倍増すると見込まれている。21/22年度以降は、1500万〜1600万トン程度で推移すると見込まれている(図15)。
19/20年度には干ばつにより、生産量が減少する一方で国内消費量が増加したことで豪州産小麦価格は上昇した。また、輸入国側にとっては、穀物の輸入に伴うコストが高くなったことで、豪州の輸出量は減少した。これにより、豪州産小麦の主要輸出先である東南アジア、特にインドネシア(世界第2位の小麦輸入国)は、輸入需要を満たすために、アルゼンチンやウクライナなど他国産の調達を進めた。しかし、20/21年度は豪州の生産量が大幅に増加するため、価格競争力のある豪州産小麦は、輸出市場でのシェアを取り戻すと見込まれている。
現在、世界の小麦消費量のうち、製粉用小麦と飼料用小麦の消費量が全体の約9割を占めている。飼料用は、エネルギー飼料としてトウモロコシなどとの相対価格によって需要が変動するが、製粉用には代替作物がほとんどなく、COVID-19によっても小麦の需要が大きく影響を受けることはなかった。
多くの国ではCOVID-19による影響で、外食産業における需要は減少したが、パンやパスタ、家庭料理用の小麦粉などの主食に対する消費者の旺盛な需要により、この影響はほぼ相殺されたとしている。
イ 粗粒穀物
日本が輸入する飼料穀物のうち、豪州からの輸入が約半数を占める大麦を含む粗粒穀物(大麦、ソルガムなど)の2020/21年度の輸出量は、939万トン(前年度比2.2倍)と、2倍以上の大幅な増加を見込んでいる(図15)。
21/22年度以降は、おおむね600万〜700万トンの間で推移するものと見込んでいる。
世界の飼料用穀物の需要は、短期的には中国のアフリカ豚熱からの回復などにより増加するものと見込まれており、中期的には、食肉や乳製品の生産量の増加に伴い、引き続き増加すると予測されている。
(3) 国際価格
ア 小麦
2020/21年度の小麦の国際価格は、アジア諸国における所得と人口の増加、食習慣の変化などにより世界的に需要が増加していることから、1トン当たり255米ドル(2万8560円、前年度比15.9%高)とかなり大きく上昇すると見込んでいる(図16)。
21/22年度以降は、消費量は増加するが、ア ルゼンチン、EU、ウクライナおよび米国の生産量が増加することや、COVID-19からの回復の不確実性を考慮し、わずかに下落傾向で推移すると見込んでいる。
イ 大麦
2020/21年度の大麦の国際価格は、1トン当たり230米ドル(2万5760円、前年度比25.1%高)と大幅に上昇すると見込んでいる(図16)。21/22年度以降は、世界の大麦消費量が世界の生産量に比べて早いペースで減少すると予測されているため、わずかに下落傾向で推移するとされ、25/26年度には1トン当たり211米ドル(2万3632円)まで下落すると見込んでいる。
世界の大麦価格は、短期的にはロシアなどが課した輸出規制
(注5)と、中国の需要による影響を受け、中期的にも、中国の旺盛な需要が引き続き世界の価格を下支えすると予測されている。
(注5)COVID-19拡大などにより、ロシアでは大麦をはじめ、小麦、ライ麦、トウモロコシの輸出枠の設定と枠外輸出税を課すなどの対応を、2021年2月15日から同年6月30日まで行うとしているものなど。