令和3年4月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり241円(前年同月比39円高)と2カ月連続で前年同月を上回った(図17)。前月から同21円上昇し、直近5カ年の4月の同価格と比較すると最も高い水準となった。
同価格は、例年、最需要期の12月に向けて上昇した後、年明けに下落し、春先に向けて再び上昇する傾向がある。4月の同価格は、月初の同230円から、下旬には同250円まで上昇し、1カ月間の上昇幅は同20円となった。高病原性鳥インフルエンザの発生による殺処分羽数の増加などにより、価格は例年を上回って推移している。
今後について、供給面は、一般的に鳥インフルエンザの発生リスクが高いとされる時期は過ぎたものの、殺処分羽数の増加により供給量は引き続き抑えられるとみられる。需要面は、東京都などに3度目の緊急事態宣言が発令され、一部地域においてもまん延防止等重点措置が講じられるなど、引き続き巣ごもり需要は継続すると見込まれる一方、外食需要の回復には時間を要するものとみられる。
令和元年の鶏卵産出額は前年をやや下回る
令和3年3月12日に農林水産省が公表した「令和元年農業総産出額及び生産農業所得」によると、元年の鶏卵の産出額(全国推計)は4549億円(前年比5.5%減)と前年をやや下回った(図18)。鶏卵生産量は、平成25年夏以降、家庭用、業務加工用ともに需要が旺盛であったことなどから、鶏卵卸売価格が堅調に推移したことで生産者の増産意欲が高まり、増加傾向で推移している。これに伴い、26〜29年の産出額は5000億円台で推移した。しかしながら、30年および令和元年の産出額は、生産量の増加に伴う需給緩和により鶏卵相場が低い水準で推移した結果、生産量の増加に反して、ともに前年を下回る水準となった。
都道府県別の上位5県の鶏卵の産出額(都道府県別推計)
(注)を見ると、最も産出額が大きかったのは最大の鶏卵生産地である茨城県で453億円(全国シェア9.9%)となった(図19、20)。第2位は千葉県で326億円(同7.1%)、第3位は鹿児島県で263億円(同5.7%)となった。元年の鶏卵生産量を見ると、第2位は鹿児島県、第3位は千葉県であり、鶏卵産出額と順位が逆転している。次いで、岡山県が241億円(同5.2%)、広島県が215億円(同4.7%)となった。
(注) 都道府県別推計は、他の都道府県に販売された中間生産物(最終生産物となる農産物の生産のために再び投入される農産物をいい、種子や子豚、種卵などが該当する)を農業産出額に計上するため、都道府県別推計の合計値と全国推計の農業産出額は必ずしも一致しない。
(畜産振興部 前田 絵梨)