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海外の需給動向【牛肉/EU】 畜産の情報 2021年6月号

EUの牛肉価格は堅調

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EUの牛肉価格、前年同月同週比7.7%高
 EUの牛枝肉卸売価格は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止対策による外食需要などの減少の影響を大きく受け、2020年4月に急激に下落し、同年9月まで低迷が続いた(図4)。その後、わずかながらも外食需要が回復するとともに、輸出向け需要やクリスマス需要、輸入量の減少などが後押しし、価格は回復傾向となった。さらに年明けも引き続き輸入には慎重な動きがある中、小売販売が堅調なことに加え、イースター需要などもあり、COVID-19拡大前を超える水準にまで価格を戻している。欧州委員会によると、直近の4月26日の週平均の参考価格(A/C/Z-R3)(注)は、前週比同、前月比1.4%高、前年同月同週比7.7%高の100キログラム当たり375.0ユーロ(4万9875円:1ユーロ=133円)となった。

(注)参考価格(A/C/Z-R3)とは、EUにおける牛枝肉卸売価格の指標的な価格であり、A=若雄牛(12〜23カ月齢)、C=去勢牛(12カ月齢以上)、Z=若齢牛(8〜11カ月齢)のうち、R=枝肉の格付けが上(6段階評価の上から4番目)、3=脂肪の沈着度合が平均的(5段階評価の上から3番目)なものの加重平均価格である。


2021年の牛肉生産量は1.0%減の見込み
 欧州委員会によると、2020年の牛肉生産量(EU27カ国)は、飼料価格の高止まりによる収益性の低下を背景に2018年をピークとした牛群縮小傾向が継続していることに加え、COVID-19の影響による価格低迷などから、前年比1.1%減の689万8000トンとなった(図5)。加盟国別に見ると、EU域内で最大生産国のフランスが同0.4%増、第5位のアイルランドが同2.2%増であったものの、第2位から第4位では、ドイツが同1.4%減、イタリアが同6.1%減、スペインが同2.6%減とそれぞれ減少した(表2)。
 2021年は、引き続き牛群縮小傾向が継続していることやCOVID-19の影響による外食需要の停滞により、同1.0%減の683万トンとさらに減少が見込まれている。

  


2021年の牛肉輸出量は増加の見込み
 2020年の牛肉輸出量(EU27カ国)は前年比1.8%増となった(表3)。香港、カナダ、日本、ノルウェー向けなどを中心に輸出が堅調であったことが貢献している。ただし、Brexitの影響により英国向け輸出量は減少した。2021年の輸出量も域内の景気回復の見通しの不透明感から輸出機会を探ることになり、引き続き増加するとみられている。
 一方、2020年の牛肉の輸入量は外食需要が減少したことから同20.6%減と大幅に減少した。EUの輸入先である英国やブラジルでは、EU向け輸出量の減少分を中国などアジア諸国へ振り分けた。2021年の輸入量は外食産業の営業が徐々に回復するとの想定から同2.0%増とわずかながらも増加が見込まれている。

 
(調査情報部 国際調査グループ)