EYCI価格は900豪セントの大台を突破
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、4月20日に1キログラム当たり910.25豪セント(783円:1豪ドル=86円)となり、過去最高を記録した(図6)。
MLAは、最近の降雨により牧草の生育状況が良好であるため、フィードロットや一般的な肥育農家からの牛の需要が高いことや、過去の干ばつにより高重量の出荷適期の牛が不足していることから、依然として若齢牛が高値で取引されているが、年内には出荷適期の牛のと畜頭数は回復すると予想している。現在は牛群再構築の動きを背景にEYCI価格は依然として上昇基調にあるが、豪州の畜産市場調査会社であるトーマス・エルダー・マーケッツは、現在のEYCI価格をけん引している牧草肥育農家の損益分岐点である、1キログラム当たり920〜930豪セント(791〜800円)を相場の上限額と見込んでいる。また、現地関係者からは、牛群再構築が完了すると見込まれる今後2〜3年の間は、高値水準が維持されるとの見方も出ている。
3月の日本向け牛肉輸出量は前年同月比25%減
豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2021年3月の牛肉輸出量は、現在、干ばつからの回復により牛群再構築が進んでおり、と畜頭数が引き続き低水準で推移していることから、8万3438トン(前年同月比11.2%減)となった(表4)。
輸出先別に見ると、豪州産牛肉の最大の仕向け先である日本向けは、前年同月比24.8%減の2万130トンと大幅に減少している。MLAによると、日豪EPAや環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)に基づき、4月から豪州産牛肉の関税が段階的に引き下げられることもあり、通常、毎年3月の日本向け輸出量はやや抑制される傾向にあるとしている。なお、2021年度のCPTPPに基づく豪州から日本向けの冷蔵・冷凍牛肉の関税は、前年度の25.8%から25.0%となる。
また、3月の日本向け輸出量の構成比を見ると、穀物肥育牛肉が51.9%、牧草肥育牛肉が48.1%となっており、今年に入ってからは、牧草肥育牛肉の割合が上昇傾向にある(図7)。
他の主要な輸出先でも同様に、豪州からの牛肉輸出量は前年と比べて減少しているが、日本向けに次いで3月の輸出量が多い韓国向けは、1万5682トン(同19.8%増)と大幅に増加した。また、中国向けは、1万4929トン(同18.5%減)となったが、前月の1万1676トンからは大幅に増加(前月比27.9%増)している。米国向けは1万2680トン(前年同月比26.2%減)と大幅に減少した。EU向けは610トン(同1.0%減)と、前年同月をわずかに下回った。
MLAによると、豪州政府は現在、イスラエルやスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインとのFTA締結を検討しているとしており、牛肉輸出先の多角化を図る動きとなる可能性もある。
(調査情報部 国際調査グループ)