3月の生乳生産量、前年同月からかなりの程度増加
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2021年3月の生乳生産量は184万4000トン(前年同月比9.8%増)と前年同月をかなりの程度上回り、2020/21年度(6月〜翌5月)の累計も前年同期比1.6%増で推移している(図20)。現地報道によると、この増産は、一部地域で寒波や干ばつがあったものの、全土的には降雨により牧草が順調に成長したためとしている。また、例年であれば5月に終了する搾乳期間を延長する動きがあることから、今年度の生産総量も増産が見込まれている。
3月の中国向け輸出量が大幅に増加
ニュージーランド統計局(Statistics NZ)によると、2021年3月の乳製品主要4品目(脱脂粉乳、全粉乳、バターおよびバターオイル、チーズ)の輸出量は、脱脂粉乳以外の品目で前年同月を大幅に上回った(表14、図21)。これは、主要消費国である中国国内での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による外出規制が大幅に緩和され、外食需要などが回復してきたことから、同国向け輸出量が大幅に増加したことによる。
品目別に見ると、脱脂粉乳は3万1554トン(前年同月比5.5%減)と4カ月連続で減少した。マレーシア向け、フィリピン向けおよび日本向けが大幅に減少したものの、主要輸出先である中国向けが1万2935トン(同49.6%増)と大幅に増加したため、全体では減少の勢いは後退した。
全粉乳は、16万4603トン(同23.6%増)と前年同月を大幅に上回った。主要輸出先である中国向けが8万3080トン(同39.6%増)、アラブ首長国連邦向けもそれぞれ大幅に増加した。
バターおよびバターオイルも、4万3461トン(同19.8%増)と大幅に上回った。エジプト向けおよび米国向けが大幅に減少したものの、脱脂粉乳と同様に中国向けが1万4445トン(同約2.7倍)と大幅に増加したことから、全体でも大幅に増加した。
チーズは、3万7042トン(同29.9%増)と5カ月連続で前年同月を上回った。主要輸出先である中国向けが1万807トン(同約2.1倍)と大幅に増加したことから、全体でも大幅に増加した。
GDT、4月は大きな動きはなし
2021年4月20日に開催されたグローバルデーリートレード(GDT:乳製品の国際価格の指標の一つであるフォンテラ社主催の電子オークション。月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、前回(4月6日)に続き、大きな動きはなかった。(表15、図22)。
現地報道によると、脱脂粉乳は東南アジアやオセアニア地域で需要が減少し、安価な北米産にシフトしたものの、応札の大部分を占める北アジア(注)の需要が堅調であるため、前回比0.1%安の1トン当たり37万円にとどまった。全粉乳は、取引数量が増加したにもかかわらず、中国を中心に北アジアからの応札が増加したため、同0.3%高の同45万1000円とわずかに上昇した。バターについても、取引数量が増加したものの、同0.7%安の同63万1000円と、価格の低下はわずかであった。また、チーズは、北アジア、東南アジア、オセアニアからの応札があり、同1.0%高の48万8000円となった。現地報道によると、チーズの価格上昇については、応札に比べ取引数量が少なかったためとしている。
中国を中心とした北アジアからの需要は依然として根強く、今後も堅調な需要が見込まれることから、引き続き乳製品国際相場を下支えしていくものと見込まれている。
(注)ニュージーランド外務貿易省は、中国、日本、香港、韓国、台湾を北アジアとしている。
(調査情報部 寺西 梨衣)