食肉代替食品(植物由来。以下同じ)の認知度を見ると、「よく知っている(説明できる)」または「知っている」と回答した人の割合は、ドイツが最も高い74%、次いで米国が73%、中国が69%となった一方、日本は49%と最も低かった(図12)。また、日本は、「知らない」の割合が8カ国の中で最も高い17%となり、消費者には十分に認知されていないという結果となった。
その日本における食肉代替食品を「知らない」と回答した人の属性別の割合を見ると、世帯用食品の購入時の関与度合いが低い人や食の志向で「どれも当てはまらない」と回答した人など、食へのこだわりが少ないとみられる層を筆頭に「ポストミレニアル世代」(1997年以降生)、「主要地域以外」、「学生」、「所得階級1」(年収300万円未満)に該当する人が高い傾向となった(図13)。
食肉代替食品を食べたことがある人の割合を品目別に見ると、「植物由来のハンバーガー・ハンバーグ」は、多くの国で他の品目よりも高い傾向があった(図14)。国別では、ブラジルが最大の59%、次いで米国が54%となった。「植物由来のソーセージ」は、タイが最大の55%、次いでドイツが48%となった。次に、「植物由来のハム」は、他の品目と比べると割合が低い傾向となったが、中国、タイでは40%と高い水準となった。「その他の植物由来の食肉代替食品」は、インドネシア、タイで4割超と他国と比べて割合が高い。これは、インドネシアでは、テンペと呼ばれる伝統的な大豆発酵食品や厚揚げ、豆腐などの大豆製品が日常的に食されており、これらが食肉代替食品として位置付けられていることや、タイでは、毎年10月ごろに行われる、華人系を中心とした菜食週間(キンジェー)などを通じ、以前から多くの食肉代替食品が浸透していることが一因にあるとみられる。また、豪州は他国と比べて食肉代替食品の認知度は低くはないものの、「食べたことがない・覚えていない」の割合が46%と8カ国の中で最も高かった。
過去1年間の食肉代替食品の喫食頻度を品目別に見ると、いずれの国も植物由来のハンバーガー・ハンバーグやソーセージの喫食頻度がおおむね高い傾向があった(図15)。また、国別では、中国やタイの喫食頻度が全体的に高い一方、豪州はいずれの品目でも低い結果となった。
過去1年間の植物由来のハンバーガー・ハンバーグの喫食頻度を見ると、「1カ月間に1回以上」と回答した人の割合は、8カ国全体で12%となった(図16)。属性別では、食肉を食べない層、ミレニアル世代(1981〜96年生)、主要地域、高所得者層に加え、世帯用食品の購入にいつも関与している人や菜食志向を中心に、食へのこだわりが強いとみられる層の割合が高い傾向があった。
食肉代替食品の喫食頻度が1カ月間に1回以上の層(注4)と食べたことがない・覚えていない層で食の志向性の違いを見ると、8カ国全体では、すべての項目で食事頻度が1カ月間に1回以上の層が食べたことがない・覚えていない層を上回った(図17)。食肉代替食品の喫食頻度が高い人は食へのこだわりが強いとみられ、特に「菜食志向」「健康志向」「安全志向」の差が大きい一方、「経済性志向」「簡便志向」「国産志向」の差は比較的小さい傾向があった。
(注4)本稿での「食肉代替食品の喫食頻度が1カ月間に1回以上の層」は、植物由来のハンバーガー・ハンバーグ、ソーセージ、ハム、その他の食肉代替食品のいずれか1つ以上で食事頻度が1カ月間に1回以上と回答した人をいう。
1年前と比べた現在の食肉代替食品の喫食頻度は、いずれの国も増えた層(「増えた」「やや増えた」の合計)の割合が減った層(「減った」「やや減った」の合計)を大きく上回ったことから、この1年の間にも食肉代替食品の市場は各国で拡大したとみられる(図18)。食肉代替食品を食べたことがある人を対象とした場合、国別では、中国の増えた層が57%と8カ国の中で最も高かった。一方、日本の増えた層は37%と最も低かったが、減った層の割合も最も低かったことから、「変わらない」の割合は最も高かった。
食肉代替食品に対する価格許容度(内容量などが同等の食肉や食肉加工品の価格と比較した場合)は、多くの国で同等程度の価格帯の割合が高く、1〜2割程度の高値、1割以上の安値の層も厚い傾向があった(図19)。なお、豪州、米国、日本は他の国と比べて、高値での購入に消極的な結果となった。
食肉代替食品を食べる理由を見ると、「食肉代替食品の喫食頻度が1年間に1回以上」と回答した人の場合は、多くの国で「おいしいから」「健康・ダイエットに良さそうだから」の割合が高い傾向があった(図20)。日本については、「おいしいから」「価格が手ごろだから」が8カ国の中で最も高くなった一方、「持続可能性に配慮したものだと思うから」「家畜・家きんにとっていいことだと思うから」は最も低かった。また、「持続可能性に配慮したものだと思うから」は、ブラジル、ドイツの割合が高く、「家畜・家きんにとっていいことだと思うから」は、ドイツ、豪州の割合が高い傾向があった。
図19の食肉代替食品の価格許容度について「5割以上の高値でも購入を検討する」と回答した人の場合は、すべての国で「おいしいから」の割合が最も高く、日本は67%と8カ国の中で最も高かった(図21)。また、「食肉代替食品の食事頻度が1カ月間に1回以上」と回答した人の場合と比べ、すべての国で「おいしいから」の割合が増加したものの、「健康・ダイエットに良さそうだから」が減少した。高値での購入にも積極的な層は、日本を筆頭にすべての国で特に味を高く評価している人が多かった。