当機構では、食肉の消費・販売動向を把握するため、年に2回、卸売業者(牛肉・豚肉のべ28社)および小売業者(量販店・食肉専門店計のべ83社)の協力を得て、食肉の取り扱いなどに関する調査を実施している。今回、令和3年2月に実施した「食肉販売動向調査結果(2021年度上半期)」から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下における和牛肉の販売動向(令和2年度下半期実績および3年度上半期の見通し)について報告する。
量販店・食肉専門店向けの仕向け割合が54%
令和2年度下半期の卸売業者における仕向け先別販売割合の実績(重量ベース、以下同様)を見ると、和牛肉は「量販店・食肉専門店」仕向けが最も多く39%となった(図15)。なお、和牛肉の「二次卸売業者」の最終仕向け先のうち48%が「量販店・食肉専門店」向けであったことを考慮すると、和牛肉の「量販店・食肉専門店」向けの仕向け割合は54%になると推計される(図16)。また、前回調査(2年度上半期)と比較すると、和牛肉の「量販店・食肉専門店」への仕向け割合が4.7ポイント低下していることから、下半期に入り家計消費以外への仕向けが回復してきていることがうかがえる。
すべての等級で、量販店および食肉専門店への仕向けが増加
令和2年度下半期の卸売業者における和牛肉の等級別の主な販売先(件数ベース)を見ると、すべての等級において「量販店」へ仕向けるとの回答が最も多く、次いで、「食肉専門店」となった(図17)。前年同期(元年度下半期)と比較すると、今回はすべての等級で「量販店」へ仕向けると回答した者が大きく増加していることから、内食需要の高まりを背景に小売店に多く出回ったとみられる。また、前回調査(2年度上半期)と比較すると、「ステーキ店」や「すき焼き・しゃぶしゃぶ店」向けは需要に回復が見られる一方、特に「ホテル」向けが大きく減少しており、需要が回復していない状況がうかがえる。
4、5等級の輸出向けが増加の見通し
令和3年度上半期の卸売業者における和牛肉(4、5等級)の販売先別販売見通し(重量ベース)について、前回調査(2年度下半期)と比較すると、前回は「量販店」および「食肉専門店」以外で「増加する」の回答はなかったが、今回は「その他」を除くすべての区分において「増加する」の回答があった(図18)。特に、「輸出」は約5割まで増加し、COVID-19の影響下においても輸出向け需要に回復が見られる結果となった。輸出の増加理由として「海外での根強い和牛人気」、「COVID-19の終息による環境・需要の変化を期待」、「アジアマーケットでの需要向上を見込む」などが挙げられた。
一方で、「量販店」は「減少する」の回答が前回調査から増加した。減少理由として「消費者の低価格志向」が多く挙げられた。
量販店では4等級が、食肉販売店では5等級が約5割を占める
令和2年度下半期の量販店における和牛肉の等級別取扱割合の実績(重量ベース)を見ると、4等級が54%と最も多く、次いで3等級が25%、5等級が18%、2等級が3%となった(図19)。主な部位として4等級は「もも」が最も多く、次いで「かた」であった。なお、前年同期(元年度下半期)では4等級の主な取扱部位は「かたロース」が最も多く、次いで「リブロース・サーロイン」であったことから、比較的安価な部位の需要が増えているとみられる。
一方で、2年度下半期の食肉専門店における和牛肉の等級別取扱割合の実績(重量ベース)を見ると、5等級が48%と最も多く、次いで4等級が35%、3等級が10%、2等級が7%となった。主な部位として5等級は「かたロース」、4等級は「かたロース」および「もも」、3等級は「もも」が最も多く、量販店と比べて取り扱い部位の変化などは見られなかった。
量販店では、和牛肉の販売量が増加
令和元年度下半期と比較した2年度下半期の量販店における和牛肉の販売量の増減割合を見ると、4、5等級は75%、2、3等級は71%が増加したと回答した(図20)。販売量の増加理由は「内食需要の増加」、「仕入れ価格低下による販促の実施」、「産地応援セールの実施」などが挙げられ、COVID-19の影響による内食需要の増加に加え、仕入価格の低下が量販店における和牛肉の取り扱いを押し上げている状況がうかがえる。
元年度下半期と比較した2年度下半期の食肉専門店における和牛肉の販売量の増減割合を見ると、4、5等級で増加が多く、2、3等級は減少が多かった(図21)。4、5等級の増加理由としては、量販店と同様、「内食需要が増加した」、「仕入れ価格低下による販促を実施した」に加え、「家庭内でのバーベキュー、焼き肉が増えた」、「新規の客数が増えた」などが挙げられた。一方、2、3等級の減少理由としては「外食需要が停滞している」「和牛の4、5等級に比べて物量を確保するのが難しい」などが挙げられた。また、量販店と比較して増加したと答えた割合が小さかった理由として、「消費者の低価格志向から、比較的安価な商品を取り扱う量販店へ客足が流れた」との声が挙がった。
量販店では低級部位の減少割合が多い見通し
令和2年度上半期と比較した3年度上半期の量販店における和牛肉の等級別販売見通しについては、5等級は「変わらない」が最も多く、また「減少する」が「増加する」を上回った。4等級は「増加する」と「変わらない」が同水準となり、7割を占めた。3等級は「減少する」が50%と最も多く、2等級は「減少する」と「変わらない」が同水準となった(図22)。前回調査(2年度下半期)と比較すると、すべての等級において「減少する」の回答が増加した。減少理由としては「COVID-19による特需の反動」が多く挙げられた。
2年度上半期と比較した3年度上半期の食肉専門店における和牛肉の等級別販売見通しについては、5等級では「減少する」が「増加する」を上回った一方、2等級および3等級では「増加する」が「減少する」を上回った(図23)。しかしながら、すべての等級で「変わらない」が最も多く、おおむね現状維持との見方が多い結果となった。
(畜産振興部 田中 美宇)