令和3年5月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり258円(前年同月比90円高)と3カ月連続で前年同月を上回り、直近5カ年の5月の同価格と比較すると最も高い水準となった(図26)。
例年、年明けに下落した同価格は、春先に向けて再び上昇した後、気温の上昇と共に低下する傾向があるが、今年は高病原性鳥インフルエンザが過去最大の発生となり、採卵鶏における殺処分羽数の増加などにより例年の動きとは異なり、前月から同17円上昇した。その後も同価格は例年を上回って推移している。なお、今シーズンの殺処分羽数は飼養羽数全体のおよそ5%程度の規模となり、3年3月13日の発生が最後で、4、5月は確認されていない。
今後について、鳥インフルエンザの発生リスクが高いとされる時期は過ぎたものの、供給量は引き続き抑えられるとみられる。需要面は、内食および中食の需要はある一方、外食需要の早急な回復は難しいとみられる。なお、4月の鶏卵の家計消費量(全国1人当たり)は、978グラム(同5.6%減)と巣ごもり需要の拡大により消費量が伸びた前年同月をやや下回ったものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生前の過去5カ年(平成27年〜平成31年)の4月の平均消費量(同884グラム)と比べると高い水準にあり、引き続き巣ごもり需要は継続すると見込まれる(総務省「家計調査」)。
1〜4月の採卵用めすひなの出荷・え付け羽数、前年同期をやや下回る
一般社団法人日本種鶏孵卵協会によると、令和3年4月の採卵用めすひなの出荷・え付け羽数
(注)は903万1000羽(前年同月比3.9%増)と前年同月をやや上回ったものの、3年1〜4月の同羽数は、3386万羽(前年同期比5.1%減)と前年同期をやや下回った(図27)。
COVID-19の影響で業務・加工用需要が低迷したことで需給が緩和状態にあり、価格が低水準で推移したことや鳥インフルエンザの影響などにより、同羽数は2年9月以降、3年2、4月を除いて前年同月を下回って推移している。
え付けしたひなが産卵を開始するのは約5カ月後とされ、出荷・え付け羽数の増減は鶏卵供給量に影響を与える一因となっている。3年1月の同羽数は795万5000羽(前年同月比16.1%減)と前年同月を大幅に下回っており、鳥インフルエンザの発生による鶏卵供給量の減少が回復するには時間を要するとみられる。
(注) 一般社団法人日本種鶏孵卵協会調査の報告羽数の集計値であって、全国の推計値ではない。
(畜産振興部 前田 絵梨)