フィードロット飼養頭数は堅調に推移、今後は干ばつの影響を注視する必要
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)の「Cattle on Feed」によると、2021年4月のフィードロット導入頭数は前年同月比27.2%増の182万1000頭、出荷頭数は同32.8%増の193万8000頭といずれも大幅な増加となった。その結果、5月のフィードロット飼養頭数は同4.7%増の1172万5000頭となり、10カ月連続で前年同月を上回った(図1)。
一方で、米国の一部では干ばつに見舞われており、USDAによると全米牛飼養頭数の約36%が干ばつ地域で飼養されている状況にある。また、当該地域では牧草の生育状況も悪化しており、乾草や粗飼料の価格が上昇している。これらの影響から、21年のフィードロット導入頭数が増え、その結果として、22年のフィードロット導入頭数は減少する可能性も示唆されている。
と畜頭数は前年同月から大幅に増加
USDA/NASSの「Livestock Slaughter」によると、2021年4月の牛と畜頭数は前年同月比27.6%増の279万3600頭と大幅に増加し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響を受ける前の19年の水準にまで戻した(図2)。21年第1四半期(1〜3月)は、食肉処理施設での労働力不足などにより平日の1日当たり平均と畜頭数が前年同期を2000〜3000頭下回る状況にあったが、土曜日の処理能力を拡大できたことでこの不足分をほぼ埋め合わせたとUSDAは分析している。
また、今後のと畜頭数については、干ばつの影響で牧草の生育状態が悪化し、飼料費も上昇していることから、21年のと畜のペースは上がると見込んでいる。21年4月のと畜頭数を種類別に見ると、未経産牛が前年同月比31.8%増の90万8800頭と大幅に増加している。これは、干ばつの影響などにより繁殖経営での雌牛留保が難しくなり、出荷・と畜に向けられたものと考えられる。USDAは、このまま牧草地の状態が改善しない場合、結果的に22年の飼養頭数およびと畜頭数は減少すると予想している。
3月の牛肉輸出は中国向けが大幅に増加、輸出量第3位に
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2021年3月の牛肉輸出量は13万6109トン(前年同月比12.3%増)とかなり大きく増加し、過去最多を記録した(表1)。
主要輸出先別に見ると、日本向けが同12.2%減の3万4345トンと前年同月を下回ったものの、単月実績としては昨年12月以来の首位となった。2位の韓国向けは同9.0%増の3万193トン、4位のメキシコ向けは同1.1%増の1万3013トンと前年同月を上回ったが、5位のカナダ向けは同15.9%減の9654トンと前年同月を下回った。また、中国向けは、1、2月ともに前年同月を大幅に上回って推移しており、3月には同29.9倍の1万9562トンと過去最多となる輸出量を記録し、メキシコとカナダを抜き第3位となった。
21年第1四半期(1〜3月)の牛肉輸出量は、前年同期比3.5%増の36万1264トンとなった。日本向けと韓国向けが合わせて輸出シェアのほぼ半分を占めている。また、中国向けは、同15.8倍の4万779トンにまで増加し、輸出シェアは前年同期の0.7%から11.3%へと拡大した。
USDAによると、21年第2四半期および第3四半期の輸出量については、中国向けが引き続き好調に推移し、第4四半期についても同様に推移すると予測している。この結果、21年は前年比9.2%増の146万3743トンと見込んでいる。22年は、と畜頭数の減少が予測され、輸出可能な供給量が限られてくることから、21年と同程度となる146万2835トンと見込んでいる。
米国食肉輸出連合会(USMEF)は、21年第1四半期の輸出状況に関し、以下のようにコメントしている。
第1四半期の牛肉の輸出実績は、食肉業界が抱える物流や労働力に関する問題、また、外食産業への規制が続いていることを考慮すると、非常に良いスタートを切ることができた。特に、食肉処理施設での労働力不足により内臓肉などのバラエティミートの供給に制約があった中で、バラエティミートの輸出量が回復したことに勇気づけられた。
中国向けは、同国の第1四半期の牛肉輸入量に占める米国産の割合が3.4%と、前年同期の1%未満から大きく増加した。21年4月には新たに米国の食肉処理施設が対中輸出の認定を受けたことから、今後数カ月間でさらに拡大することが見込まれる。日本向けは、一時的なセーフガードによる関税率の引き上げの影響もあり、前年同期と比較して減少したものと考えられる。
2021年第1四半期の牛肉輸入量は減少、豪州とNZからの輸入量減少が影響
USDA/ERSによると、2021年3月の牛肉輸入量は前年同月比8.6%減の12万3902トンとなった(表2)。また、21年第1四半期(1〜3月)の輸入量は、前年同期比10.0%減の31万5758トンとなった。これは、オセアニア(豪州およびニュージーランド)からの輸入量の減少が要因であるとしている。豪州では20年の干ばつの影響で牛飼養頭数が減少しており、牛群再構築のために未経産牛と経産牛が留保される傾向にあり、豪州からの輸入は依然として低調に推移している。また、ニュージーランドでは、降雨による良好な放牧環境が肉牛の出荷を抑制していることに加えて、中国などの他の輸出先市場との競合も相まって、輸入量が減少したものと分析している。
(調査情報部 岡田 卓也)