と畜頭数、牛肉生産量はともに減少傾向で推移
豪州統計局(ABS)によると、2021年3月の牛と畜頭数は144万8400頭(前年同月比28.5%減)と大幅に減少した(図3)。これに伴い牛肉生産量は44万9800トン(同23.3%減)と大幅に減少した。先の干ばつによる牛群の縮小とその後の気候条件の回復による牛の保留の動きが続いていることから、と畜頭数は減少傾向で推移している。
また、豪州フィードロット協会(ALFA)によると、同月の牛と畜頭数のうち、穀物肥育牛が66万5536頭(45.9%)と半数近くを占めており
(注)、直近20年間で最も高い割合となっている。
(注)海外情報「2021年3月末のフィードロット飼養頭数、13期連続で100万頭を上回る(豪州)」
(https://www.alic.go.jp/chosa-cu/joho01b_000047.html)を参照されたい。
北部を中心に牛群再構築が進展、価格は引き続き堅調との見方
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、先の干ばつ以降の良好な天候による牧草の生育状況を反映し、牧草肥育業者からの牛の需要が依然として高いことから高値で推移している。2021年5月25日時点の同価格は1キログラム当たり889.00豪セント(773円:1豪ドル=87円)となっている(図4)。
この状況についてMLAは、主産地であるクイーンズランド州の家畜市場での取引頭数の減少を要因として挙げている。同州では夏から秋(21年初頭)にかけてまとまった降雨があったため放牧環境は良好とされており、牛群再構築に向けて農家での牛の保留意欲が特に高まっていると分析している。
今後のEYCI価格についてさまざまな分析が行われているが、牛群再構築の進展に伴い、本年後半には出荷頭数が上向くとされるものの、同800豪セント台半ばを下回る可能性は低いとの見方もある。
またMLAは、「Industry projections 2021-April update」において、四半期に一度の牛肉生産量などの見通しを公表した(表3)。
これによると、牛飼養頭数は牛群再構築の進展に伴う増加傾向が今後も続くと見込まれることから、21年は2591万6000頭(前年比5.3%増)とやや増加し、23年には2796万3000頭に達すると予測している。
また、最近の豪州気象庁(BOM)の予報では降雨量が少なく乾燥するとされているものの、直近数カ月のと畜頭数の減少傾向と、農家の牛の保留意欲が高いことを理由に、21年のと畜頭数は640万頭(同10.8%減)とかなりの程度減少し、それに伴い牛肉生産量も192万8000トン(同8.7%減)とかなりの程度減少すると見込んでいる。
なお、牛飼養頭数の増加傾向から、23年にはと畜頭数が735万頭、牛肉生産量が218万3000トンにそれぞれ回復すると予測している。
21年の牛肉輸出量は、生産量の減少に伴い91万8000トン(同11.6%減)とかなり大きく減少すると見込んでいるが、23年は牛肉生産量の回復に伴い、107万5000トンに回復すると予測している。
生体牛輸出頭数については、豪州での牛の価格高騰に伴い海外の輸入業者の利益が圧迫されていることや、これまでの干ばつにより豪州北部の牛飼養頭数が減少していることから、21年は75万頭(同25.7%減)と大幅な減少を見込んでいるが、23年は95万頭に回復すると予測している。
牛肉輸出量、韓国向けが伸びるも日本向けがトップを堅持
豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2021年4月の牛肉輸出量は、と畜頭数の減少などから7万2502トン(前年同月比21.6%減)と大幅に減少した(表4)。
輸出先別に見ると、日本向けは前年同月比22.5%減の1万8476トンと大幅に減少したが、依然として第1位を堅持している。
また、同月の日本向け輸出量の構成比を見ると、穀物肥育牛肉が53.9%、牧草肥育牛肉が46.1%となっている(図5)。
米国向けや中国向けなども減少する中、韓国向けは1万4470トン(前年同月比13.9%増)とかなり大きく増加し、日本に次ぐ第2位に浮上している。この要因についてMLAは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、韓国国内でオンラインショッピングなどを通じた牛肉需要が増加したためとみており、豪州にとって安定した重要な輸出先であるとしている。
(調査情報部 国際調査グループ)