3月の生乳出荷量は、前年同月をわずかに上回る
欧州委員会によると、2021年3月の生乳出荷量(EU27カ国)は前年同月をわずかに上回る1277万2030トン(前年同月比0.5%増)となった(表15)。
3月の出荷量を国別に見ると、ポーランド(同1.7%増)、イタリア(同1.5%増)、アイルランド(同13.5%増)、ベルギー(同0.5%増)が前年同月を上回ったものの、ドイツ(同1.1%減)、フランス(同1.4%減)、オランダ(同0.7%減)など主要酪農生産国の上位3カ国ではいずれも前年同月を下回った。また、21年第1四半期(1〜3月)の生乳出荷量は前年同期比1.3%減の3542万8350トンとなった(図29)。
なお、欧州委員会が3月30日に公表した農畜産物の短期的需給見通しにおいては、第2四半期以降の生乳生産量は前年を上回って推移すると予測されており、通年では前年比1%増が見込まれている。また、春から夏にかけて天候が良好に推移し高品質の牧草を得られれば、上昇する飼料コストの懸念を打ち消すことが見込まれるとしている。
生乳取引価格は引き続き上昇傾向
欧州委員会によると、EUの平均生乳取引価格は、世界的な乳製品需要とEU域内消費に支えられ、昨秋以降上昇傾向で推移している。また、例年であれば、生乳出荷量の増加に伴い3月以降の同価格は下落傾向で推移するが、2021年はバターや脱脂粉乳などの国際相場上昇に伴い上昇傾向で推移している。4月の生乳取引価格(推定値)は、100キログラム当たり35.11ユーロ(4740円:1ユーロ=135円)と前年同月比5.1%高となった(図30)。今後の生乳取引価格の動向については、生乳生産量が前年を上回ると見込まれる中で、EU域内外からの乳製品需要の動きが大きなカギとなっている。
中国向け乳製品輸出は引き続き好調
欧州委員会によると、2021年第1四半期(1〜3月)の英国を除くEU域外向けの乳製品輸出量は、チーズが前年同期比5.0%増の23万3898トン、脱脂粉乳が同4.6%増の20万1351トン、全粉乳が同1.2%増の7万1750トンといずれも前年同期を上回った一方で、バターは同12.6%減の4万5844トンと前年同期を下回った(表16)。
チーズの輸出量は、日本などからの需要が拡大しており、多くの主要輸出先で前年同期を上回った一方、米国向けは前年同期を下回った。これは、米国とEUとの間では、航空大手への補助金をめぐる対立から互いに報復的な追加関税を課しており、米国がEU産チーズをその対象の一つとしていたことが主な要因とされる。しかし、21年3月に米国とEUとの間で追加関税措置を4カ月間停止することが合意されたため、今後の輸出量に動きが出てくるとみられている。
なお、中国向けの乳製品輸出は引き続き好調であり、脱脂粉乳、全粉乳、バターいずれも前年同期を上回っている。
(調査情報部 小林 智也)