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国内の需給動向【令和2年度成牛および豚のと畜頭数・令和2年食鳥処理羽数】 畜産の情報 2021年8月号

令和2年度成牛および豚のと畜頭数・令和2年食鳥処理羽数

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 今回、農林水産省が公表した食肉流通統計(令和2年4月〜3年3月)および食鳥流通統計(令和2年1〜12月)の結果について畜種ごとに紹介する。

【牛肉】
令和2年度の成牛のと畜頭数、2年ぶりに増加

 農林水産省が公表した令和2年度の「食肉流通統計」によると、成牛のと畜頭数は105万2896頭(前年度比1.5%増)と、前年度をわずかに上回った。2年度は交雑牛および乳牛のと畜頭数が減少したものの、和牛のと畜頭数の増加が大きかったことから、全体では2年ぶりの増加となった。
 また、調査卸売市場(中央卸売市場(注1)および地方卸売市場(注2)。以下同じ。)における市場経由率(卸売市場における取引成立頭数(注3)が全と畜頭数に占める割合)を見ると、31.8%(33万5268頭)となった。このうち、中央卸売市場は23.5%(24万7093頭)と前年度より0.4ポイント上昇し、7年ぶりに前年度を上回った。また、地方卸売市場も8.4%(8万8175頭)と前年度より0.2ポイント上昇し、3年ぶりに前年度を上回った。

(注1)卸売市場法(昭和46年法律第35号)の規定により開設されている仙台、さいたま、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島および福岡の10市場。
(注2)卸売市場法の規定により開設されている地方卸売市場のうち、畜産経営の安定に関する法律(昭和36年法律第183号)第3条第1項の標準的販売価格の算出に用いられる市場をいい、茨城、宇都宮、群馬、川口、山梨、岐阜、浜松、東三河、四日市、姫路、加古川、西宮、岡山、坂出および佐世保の15市場。なお、食肉流通統計では「主要市場」と呼ぶ。
(注3)卸売市場への上場頭数のうち、卸売業者と売買参加者との間に取引が成立した頭数。


和牛のと畜頭数、4年連続で増加
 和牛のと畜頭数は、平成25年度以降減少傾向で推移したが、繁殖雌牛の増頭などにより、29年度からは回復傾向となっている。令和2年度は、48万3307頭(前年度比5.2%増)と前年度をやや上回り、4年連続の増加となった(図15)。
 また、市場経由率を見ると、中央卸売市場は32.8%(15万8327頭)と前年度より1.5ポイント上昇し、7年ぶりに前年度を上回った。地方卸売市場も7.9%(3万8160頭)と前年度より0.1ポイント上昇し、3年ぶりに前年度を上回った。
 直近10年間の市場経由率の推移を見ると、中央卸売市場は平成27年度まではおおむね34%台で推移し、その後は令和元年度まで低下傾向となっている。卸売価格の推移を見ると、と畜頭数の減少を受けて平成24〜28年度は上昇基調にあったことから、卸売価格が上昇傾向にある期間は中央卸売市場への出荷頭数が増える傾向にあることがうかがえる(図16)。
 また、成牛のうち、中央卸売市場の市場経由率は和牛が30%台と最も高く、市場関係者などによると、和牛の生産者において、市場取引で出荷牛が高く評価されることへの期待が大きいことが要因の一つとして挙げられている。
 



 交雑牛のと畜頭数、2年連続で減少
 交雑牛のと畜頭数は、乳用種雌牛の減少、和牛受精卵の活用から、平成30年12月以降、減少傾向となっている。令和2年度は、22万7624頭(前年度比2.8%減)と前年度をわずかに下回り、2年連続の減少となった(図17)。
 また、市場経由率を見ると、中央卸売市場は27.2%(6万1837頭)と前年度より0.8ポイント低下した一方、地方卸売市場は14.9%(3万4002頭)と前年度より0.9ポイント上昇した。
 直近10年間の市場経由率の推移を見ると、中央卸売市場は平成27年度以降、地方卸売市場は26年度をピークに、いずれもその後は低下傾向で推移しているが、地方卸売市場は令和2年度に上昇に転じた。交雑牛の卸売価格が上昇基調にあった平成27年度までは、中央卸売市場および地方卸売市場における市場経由率はおおむね横ばいから微増傾向で推移していたものの、価格が横ばいとなった28年度から令和元年度までは低下傾向で推移している(図18)。なお、2年度に地方卸売市場の市場経由率が上昇した要因は、栃木県内の食肉センターが再編統合され、宇都宮市場に処理が集約されたことに伴い、当該市場の取引成立頭数が例年に比べて大きく増加したことによるものと考えられる。
 



 
 乳牛のと畜頭数、9年連続の減少
 乳牛のと畜頭数は、乳用種雌牛の減少や性判別精液の活用による乳用後継牛確保などの動きがあり、乳用種雄牛が減少したことから、令和2年度は32万8098頭(同1.2%減)と前年度をわずかに下回り、9年連続で減少した(図19)。
 また、市場経由率を見ると、中央卸売市場は8.1%(2万6676頭)と前年度より0.7ポイント低下した。地方卸売市場は4.9%(1万6006頭)と前年度並みであった。
 直近10年間の市場経由率の推移を見ると、中央卸売市場は平成24年度以降、地方卸売市場は28年度をピークに、いずれもその後は低下傾向で推移している。
 乳牛は和牛や交雑牛に比べて市場経由率が低いが、市場関係者によれば、卸売市場への出荷にかかる輸送費用などを削減するため、生産地に近い食肉センターなどの活用が進んでいることが要因の一つとして挙げられている(図20)。
 

 

 
 【豚肉】
令和2年度の豚のと畜頭数、3年連続の増加

 豚のと畜頭数は、平成25年度に発生した豚流行性下痢(PED)発生の影響などから26年度に前年度を下回って以降、横ばいで推移している。農林水産省が公表した「食肉流通統計」によると、令和2年度は、1676万2807頭(前年度比1.9%増)と前年度をわずかに上回った。2年度は生育が順調で出荷頭数が増加したとともに、近年の子取用雌豚の増加などから、3年連続の増加となった。
 また、市場経由率を見ると、中央卸売市場は、5.2%(87万4200頭)と前年度より0.1ポイント低下し、地方卸売市場も6.6%(111万1766頭)と前年度より0.2ポイント低下した(図21)。
 直近10年間の市場経由率の推移を見ると、平成30年度までは中央卸売市場は5%台を、地方卸売市場は7%台をおおむね安定して推移していたものの、令和元年度は豚熱発生の影響により、中央卸売市場のうち名古屋市場で、地方卸売市場のうち岐阜市場で、それぞれ取引成立頭数が例年に比べて大きく減少し、2年度も引き続き低下傾向となっている。
 



 【鶏肉】
令和2年の肉用若鶏の処理羽数・処理羽数、9年連続の増加

 農林水産省が令和3年5月28日に公表した「食鳥流通統計調査」によると、2年(1〜12月)の食鳥処理羽数は8億1784万羽(前年比1.9%増)、処理重量は233万1650トン(同1.5%増)といずれも前年をわずかに上回った(図23)。
 このうち、全体の約9割を占める「肉用若鶏(ふ化後3カ月齢未満)」は、近年の好調な鶏肉需要を受け、生産者の増産意欲が高まったことから、処理羽数が7億2519万羽(同1.8%増)、処理重量が216万3628トン(同1.5%増)と、いずれも9年連続の増加となった。また、1羽当たりの重量は3.0キログラム(同0.3%減)と、前年並みとなった。重量は年々増加傾向にあることから、大型で成長の早い品種の導入が進んでいることがうかがえる。
 全体の約1割を占める「廃鶏(採卵鶏または種鶏を廃用した鶏)」は、処理羽数が8750万3000羽(同3.5%増)とやや、処理重量が15万1220トン(同2.4%増)とわずかに、いずれも前年を上回った。また、1羽当たりの重量は1.7キログラム(同1.1%減)と、前年をわずかに下回った。なお、採卵鶏の全国飼養羽数は近年増加傾向にあるため、処理羽数、処理重量ともに高い水準で推移している。
 地鶏などが含まれる「その他の肉用鶏(ふ化後3カ月齢未満)」は、処理羽数が514万7000羽(同7.6%減)、処理重量が1万6802トン(同7.7%減)といずれも前年をかなりの程度下回った。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による外食需要の減少が影響しているものと考えられる。また、1羽当たりの重量は3.3キログラム(同0.0%)と、前年並みとなった。
 

 
 (畜産振興部 高城 啓)