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海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報 2021年8月号

1〜4月の牛肉輸出量、中国向けは前年同期比14倍に

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5月の牛肉生産量、前年同月比18.5%増
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が毎月更新する「Livestock & Meat Domestic Data」によると、2021年5月の牛肉生産量は前年同月比18.5%増の100万3000トンと前年同月を大幅に上回った。この要因は、前年同月の生産量が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う食肉処理場の稼働率低下で大きく減少したことなどによるものである。一方、COVID-19拡大前の2019年同月との対比では、1日当たりのと畜頭数および1頭当たりの枝肉重量がともに上回ったものの、2021年5月はと畜場稼働日数が2日少なかったことから、生産量は5.0%減となった。また、5月の成牛と畜頭数全体に占める雌牛と畜割合は47.8%と2019年同月を2.0ポイント上回った。これは、飼料コストの上昇などで肥育牛および子牛の生産者の収益の見通しが悪化していることが一因とみられる(図1)。
 USDA/ERSの「Livestock & Meat Domestic Data」によると、2021年5月の牛肉卸売価格は、前年同月比21.7%安の100ポンド当たり318米ドル(1キログラム当たり785円:1米ドル=112円)となった(図2)。なお、前年はCOVID-19の拡大に起因する市場の混乱があったことから、単純な比較は困難となっており、2019年同月との対比では42%高となっている。これは、米国内での飲食店の再開に伴う外食需要の回復や中国向けなどの好調な輸出需要を背景に、在庫が冬場から大きく減少したことが一因とみられる。
 なお、米国の牛肉卸売価格は例年、夏場の需要期を迎える5月ごろから上昇し、7月4日の独立記念日周辺をピークに低下した後、9月第1月曜日のレイバーデー(労働者の日)に向け再び上昇する傾向があり、現地情報によると、今年も例年通りの動きになるとの見方もある。



 
牛肉輸出量、中国向けが大幅増
 USDA/ERSの「Livestock and Meat International Trade Data」によると、2021年1〜4月の牛肉輸出量は49万1500トン(前年同期比7.9%増)とかなりの程度増加し、引き続き記録的な水準となっている(表1、図3)。米国食肉輸出連合会(USMEF)によると、主要輸出先では前年の市場環境からおおむね改善しているものの、台湾などでは新型コロナウイルス感染者の増加で状況が悪化しており、パンデミック(世界的大流行)は米国食肉業界にとって依然として大きな懸念材料とされている。また、米国の多くの港湾ではコンテナ不足や船舶の混雑が続いており、これも輸出の大きな障害とされている。
 主要輸出先別に見ると、中国向けが際立って増加しており、2021年4月までの累計輸出量はすでに2020年(1〜12月)の年間輸出量を上回っている。4月の日本向けは、前年同月比25.8%減となった。USMEFは、3月18日から30日間発動した米国産牛肉に対するセーフガードの影響などによるものとしている。なお、台湾向けは、COVID-19感染者の増加に伴う飲食店での店内飲食の制限などにより、5〜6月の輸出量は減少が予想されている。



 
(調査情報部 河村 侑紀)