EYCI価格の高騰止まらず、過去最高を記録
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、6月22日に過去最高となる1キログラム当たり932.5豪セント(793円:1豪ドル=85円)を記録した(図4)。
肉牛の主産地である東部地区では、冬季の間も降雨が定期的にあり、豪州気象庁(BOM)による今後の気象見通しでも引き続き降雨が見込まれることから、肉牛を保留する動きが加速している。またMLAは、これらの豪州の状況に加え6月15日に発表された豪英FTAの合意
(注)、また、世界的な牛肉供給不足や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の近況を踏まえた外食産業の回復などの環境変化が、EYCI価格の高騰に拍車をかけているとしている。
(注)海外情報「豪英FTAが合意(その2:豪州側の反応)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002971.html)を参照されたい。
東部地区の主要州の肉用牛生産者販売価格も軒並み上昇傾向で推移している。6月のニューサウスウェールズ(NSW)州の若齢牛価格は1キログラム当たり665豪セント(565円)、また、主に日本市場向けとされるクイーンズランド(QLD)州の去勢肥育牛価格は同672豪セント(571円)、同じく主に米国向けのハンバーガー用パテとして使用される経産牛の価格は同620.5豪セント(527円)となっている(図5)。
輸出量は依然低い水準だが、韓国向けの牛肉輸出が存在感
豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2021年5月の牛肉輸出量は7万6499トンとなり、前月(7万2502トン)からはやや増加(前月比5.5%増)したものの、と畜頭数の減少などにより前年同月比22.4%減と大幅に減少した。また、1〜5月の累計でも34万8861トン(前年同期比23.7%減)と大幅に減少した(表2)。
5月の牛肉輸出量を輸出先別に見ると、日本向けは2万1865トン(前年同月比6.9%減)とかなりの程度減少し、1〜5月の累計では9万890トン(前年同期比21.7%減)と大幅に減少している。中国向けは1万3792トン(前年同月比43.3%減)、1〜5月の累計でも6万385トン(前年同期比42.1%減)とともに大幅に減少している。また、米国向けも1万1560トン(前年同月比43.7%減)、1〜5月の累計でも5万3070トン(前年同期比40.0%減)と、ともに大幅に減少している。
一方、韓国向けは1万3018トン(前年同月比5.5%減)とやや減少したものの、1〜5月の累計では6万3701トン(前年同期比1.9%増)とわずかに増加している。この動きに対しMLAは、韓国向けが比較的堅調であるのは、COVID-19の影響による同国国内のオンラインショッピングを通じた牛肉の需要増のほか、外食産業の回復が見られていることに起因しているとしている。また、韓国の一人当たり年間牛肉消費量は13キログラムとアジアで最も多く、増加傾向で推移する中、同国の牛肉消費量の約3分の2を占める輸入牛肉のうち豪州産は消費者から一定の評価を得ていることから、韓国向け牛肉輸出の見通しは明るいとしている。
(調査情報部 国際調査グループ)