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海外の需給動向【鶏肉/タイ】  畜産の情報  2021年8月号

冷凍鶏肉は日本向け輸出が大幅増、鶏肉調製品輸出は前年並み

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2021年の鶏肉生産は前年比増で推移
 2021年1〜4月の鶏肉生産量は、前年同期比1.6%増の78万6485トンとわずかに増加した(図16)。近年におけるタイの鶏肉生産量の推移を見ると、輸出需要の高まりなどを背景に、20年1月以降、一貫して前年比増で推移している。

国内の鶏肉卸売価格は安定して推移
 国内の鶏肉卸売価格は、2020年前半に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響などにより一時的に低下したものの、その後は上昇に転じ、21年1月以降は1キログラム当たり48バーツ(168円:1バーツ=3.5円)と、比較的高い水準ながらも安定して推移している(図17)。タイでは、新型コロナウイルスの新規感染者数は増加しているものの、鶏肉価格への大きな影響は生じていないとみられる。一方、世界的な飼料穀物価格の高騰により生産者の経営環境は悪化しているとされる中で、現地報道によると、COVID-19の影響により鶏肉処理・加工施設の稼働能力が低下しており、生産者の出荷計画にも影響が出ているとされ、今後の鶏肉生産への影響も懸念されている。




 
日本向け冷凍鶏肉輸出は大幅に増加
 2021年1〜4月の冷凍鶏肉の輸出量は、前年同期比14.9%増の12万6474トンとかなり大きく増加した(表8)。輸出先別に見ると、日本向けは同32.7%増の5万7708トンと大幅に増加した。これは、日本市場で競合するブラジル産鶏肉の高騰を受けて、タイ産への需要が高まったことが要因とみられている。一方、急速に輸出を伸ばしてきた中国向けは、同9.1%減の3万4816トンとかなりの程度減少した。中国では、豚肉生産の回復に伴い豚肉価格が下落する中で、代替需要として増加傾向にあった鶏肉需要も減少傾向にあるとみられる。タイ輸出鶏生産者協会によると、鶏肉処理・加工施設の労働者に新型コロナウイルスの感染者が発生している事例はあるものの、各企業が対策を講じていることから、輸出への影響はこれまでのところ限定的とされている。
 

鶏肉調製品の輸出、主要輸出先は減少も全体ではおおむね前年並み
 2021年1〜4月の鶏肉調製品輸出量は、前年同期比0.8%増の19万1332トンとなった(表9)。輸出先別に見ると、主要輸出先である日本および英国向けがそれぞれ9万9048トン(同1.5%減)、4万7408トン(同6.4%減)と減少する中で、オランダ向けやその他の地域向けが増加したことで、全体ではおおむね前年並みとなった。COVID-19の影響により主要輸出先での外食をはじめとした需要の落ち込みを反映した結果とみられる。なお、英国向けは、新型コロナウイルスの新規感染者数が多かった1〜2月は輸出量の落ち込みが激しかったが、新規感染者数が減少した3〜4月の輸出量は前年同月を上回っている。鶏肉調製品については、今後もCOVID-19の影響などにより輸出需要が左右される可能性が高く、需給状況を見通すことは困難とみられている。


(調査情報部 海老沼 一出)