日本産の食肉の消費意向を見ると、日本以外では、消費したい層(「積極的に消費したい」「やや消費したい」の合計。以下同じ)の割合はアジア3カ国(中国、インドネシア、タイ。以下同じ)で高い傾向があり、タイが58%と最も高く、次いで中国、インドネシアが41%となった。一方、最も低いのはドイツで13%となった(図9)。また、消費したくない層は、図5で自国産食肉を積極的に消費したい層が多かったドイツや豪州、米国の割合が高かった。
日本産牛乳・乳製品の消費意向を見ると、日本以外では、消費したい層の割合は、食肉と同様にアジア3カ国で高い傾向があり、タイが63%と最も高く、次いでインドネシアが50%、中国が46%となった。一方、ドイツが12%と最も低かった(図10)。また、消費したくない層は食肉と同様にドイツ、豪州、米国の割合が高かった。
なお、日本産の牛乳・乳製品を消費したい層の割合は、アジア3カ国ではいずれも日本産の食肉の割合よりも高く、欧米など4カ国(米国、ドイツ、ブラジル、豪州。以下同じ)ではいずれも日本産の食肉の割合よりも低かった。このことから、日本産への関心が高い層は、食肉、牛乳・乳製品ともにアジア3カ国で多く、欧米など4カ国では、牛乳・乳製品より食肉の方が多い結果となった。
日本産の食肉および牛乳・乳製品の消費意向を属性別に見ると、日本では、日本産を積極的に消費したい層は、ベビーブーム世代・サイレント世代(1964年以前の出生)やミレニアル世代(1981〜1996年の出生)、高所得者層に加え、世帯用食品の購入にいつも関与している人や国産志向を中心に食へのこだわりが強い層の割合が高い傾向があった(図11、12)。
日本以外の7カ国では、日本産を積極的に消費したい層は、ミレニアル世代(1981〜1996年の出生)、主要地域、高所得者層に加え、世帯用食品の購入にいつも関与している人や食へのこだわりが強い層の割合が高い傾向があった(図13、14)。日本の場合(図11、12)と比べると、主要地域や安全志向、菜食志向の人の割合が比較的高かったものの、ベビーブーム世代・サイレント世代(1964年以前の出生)の割合が低かった。
日本産の食肉および牛乳・乳製品の消費意向を男女別に見ると、比較的男女間で違いが見られたのは、米国、インドネシア、ブラジル、豪州の4カ国であり、米国、ブラジル、豪州では、男性の方が日本産を積極的に消費したい層の割合が高かった。一方、インドネシアでは女性の割合の方が高かった(図15)。
居住地域別に見ると、特に中国では、主要地域(北京市、上海市、深?市、広州市)の方が日本産を積極的に消費したい層の割合が高かった(図16)。中国の都市部では、日本食レストランや日系スーパーが多数あることから、日本産畜産物に対しても好意的な印象を持つ消費者が多いとみられる。
日本産を積極的に消費したい層と消費したくない層とで食の志向性の違いを見ると、多くの国で、食肉、牛乳・乳製品ともに、国産志向以外の項目では、日本産を消費したい層の割合が消費したくない層を上回った(図17)。また、国産志向、簡便志向、経済性志向は比較的差が小さかった一方で、安全志向の差は大きかった。
日本産の食肉および牛乳・乳製品の購入(消費)場所の意向を見ると、米国、ドイツ、豪州では、ドイツの牛乳・乳製品を除き、飲食店(外食)の割合が高い傾向があり、食肉、牛乳・乳製品ともに米国の割合が最も高かった(図18、19)。一方、アジア3カ国(中国、インドネシア、タイ)では小売(百貨店や量販店)の割合が高い傾向があった。また、食肉と牛乳・乳製品で比較すると、8カ国のいずれも飲食店(外食)の割合は食肉が牛乳・乳製品を上回った。
小売のうち購入場所別に見ると、百貨店はタイの割合が最も高かった。タイでは、日系百貨店のみならずタイ系百貨店でも日本産の食品の取り扱いが多い傾向がある。量販店でもタイの割合が最も高く、富裕層向けのスーパーを中心に日本産の食品の取り扱いが増えている。日本食専門の量販店(日系スーパーなど)は、アジア3カ国とブラジルで比較的割合が高かった。オンラインショップは、EC(インターネット上で行われる商取引)サイトの利用が盛んな中国の割合が最も高く、次いでインドネシアが高かった。
日本産の食肉および牛乳・乳製品を消費したい理由を見ると、日本では、食肉、牛乳・乳製品ともに「安全だと思うから」の割合が4割程度と最も高かった。次に割合が高かったのは「おいしいと思うから」で、食肉が約4割、牛乳・乳製品が3割となった(図20、21)。
日本以外の7カ国では、国ごとで程度は異なるものの、おおむね同様の傾向となった。食肉では、いずれの国も「おいしいと思うから」の割合が最も高く、多くの国で「健康にいいと思うから」も高かった。牛乳・乳製品では、いずれの国も「健康にいいと思うから」の割合が食肉の場合よりも高く、「おいしいと思うから」を上回る国も見られた。
国別で見ると、米国は、食肉、牛乳・乳製品ともに「おいしいと思うから」の割合が8カ国中最大となったことから、米国の日本産を消費したい層は特に味を高く評価している人が多いとみられる。また、インドネシアは、食肉、牛乳・乳製品ともに「健康にいいと思うから」の割合が8カ国中最大となったことから、インドネシアの日本産を消費したい層は、健康の観点から日本産を高く評価している人が多いとみられる。
日本産の畜産物のうち、特に和牛肉および日本産の牛乳・乳製品に対する価格許容度(内容量などが同等の日本産以外の牛肉および牛乳・乳製品の価格と比較した場合)は、日本を含むアジア4カ国では、ほかの地域と比べて高値での購入に積極的な傾向がみられた。一方、米国、ドイツ、豪州は高値での購入にやや消極的なことに加え、「価格問わず購入しない」の割合が、食肉は3割程度、牛乳・乳製品は4割程度となった(図22、23)。
日本産を消費したい層の場合、全体を対象とした場合(図22、23)と比べると、すべての国で「10割(2倍)以上の高値でも購入を検討する」の割合が高かった(図24、25)。また、「10割(2倍)以上の高値でも購入を検討する」は、和牛肉、牛乳・乳製品ともに米国の割合が最大となり、次いで豪州、インドネシアとなった一方、日本が最小となった。
今後の和牛肉および日本産の牛乳・乳製品に期待することは、多くの国で「味・鮮度などの品質向上」「値下げや低価格商品の拡充」「有機(オーガニック)食品や持続可能性に配慮した商品の拡充」の割合が高い傾向があった(図26、27)。また、「値下げや低価格商品の拡充」の割合は、特に日本やタイが高く、「有機(オーガニック)食品や持続可能性に配慮した商品の拡充」は中国が高かった。なお、世界最大のイスラム国家であるインドネシアでは、「ハラル対応またはアニマルウェルフェアに配慮した商品の拡充」の割合が高かった。
なお、日本産を消費したい層の場合は、(1)(図26、27)とおおむね同様の傾向ではあるが、すべての国で(1)よりも「味・鮮度などの品質向上」の割合が高かった(図28、29)。