令和3年6月の牛乳等向け生乳処理量、4カ月ぶりに前年同月を下回る
令和3年6月の生乳生産量は、64万621トン(前年同月比2.8%増)となった(図15)。地域別に見ると、北海道は36万766トン(同3.2%増)、都府県は27万9855トン(同2.2%増)と、いずれも前年同月を上回った(農林水産省「牛乳乳製品統計」)。
用途別生乳処理量を仕向け先別に見ると、牛乳等向けが35万1759トン(前年同月比1.0%減)と4カ月ぶりに前年同月をわずかに下回った(図16)。一方、乳製品向けは、28万4626トン(同7.6%増)と5カ月ぶりに前年同月をかなりの程度上回った。生乳生産量増加の中、昨年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴う巣ごもり需要の反動により、家庭での牛乳およびはっ酵乳の消費は減少している。加えて、牛乳の業務用需要も例年の水準までには回復していないため、結果的に乳製品向けの増加につながった。特に乳製品向けのうち、脱脂粉乳・バター等向けは14万2206トン(同11.7%増)と、前年同月をかなり大きく上回った(農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」)。
令和3年度の生乳生産量、引き続き増加の見通し
一般社団法人Jミルクは令和3年7月30日、最新の「2021年度の生乳及び牛乳乳製品の需給見通しと課題について」を公表した。これによると、3年度の生乳生産量は前年度比1.7%増の756万4000トン、このうち北海道が426万9000トン(同2.6%増)、都府県が329万5000トン(同0.6%増)と見込んでいる(表1)。前回(5月)の見通しから、全国で4万トン増、うち北海道は2万2000トン増、都府県が1万8000トン増となっている。
また、月齢別乳用雌牛頭数を見ると、生乳生産の主力となる2〜4歳の頭数は北海道が35万頭(同3.6%増)、都府県が26万頭(同1.6%増)と、いずれも前年を上回って推移する見通しであり、今後も引き続き生乳生産量増加が見込まれる状況となっている。
チーズ総消費量、過去最高を更新
農林水産省が7月21日に公表した「令和2年度チーズの需給表」によると、2年度のチーズの総消費量は、36万704トン(前年度比0.2%増)と6年連続で過去最高を更新した(図17)。うち、プロセスチーズ消費量は、COVID-19拡大による巣ごもり需要の増加を背景に14万3525トン(同2.1%増)と前年度をわずかに上回った一方で、ナチュラルチーズ消費量は、外食需要の減少により21万7179トン(同1.1%減)と、4年ぶりの減少に転じた。
2年度の国産ナチュラルチーズの生産量は、加工向けへの配乳調整の一環で生産が拡大し、4万7564トン(同7.1%増)と前年度をかなりの程度上回った(図18)。一方、輸入ナチュラルチーズ総量は、業務用需要の停滞から28万2454トン(同1.6%減)と4年ぶりに前年度を下回った。こうしたことから、チーズ総消費量に占める国産割合(ナチュラルチーズベース)は前年度の13.1%から1.0ポイント増の14.1%
(注)となった。
国産ナチュラルチーズ生産量の内訳を見ると、直接消費用を中心とするプロセスチーズ原料用以外が2万6257トン(同5.0%増)と過去最高となり、また、プロセスチーズ原料用も7年ぶりに前年度を上回る2万1307トン(同9.8%増)となった(表2)。
なお、当機構では、令和3年度においても引き続き、国産乳製品等競争力強化対策事業の実施などを通じて、国産チーズの生産・消費の拡大を支援している。
(注) チーズ総消費量の国産割合は、ナチュラルチーズに換算したチーズ総消費量における国産ナチュラルチーズ生産量の割合から推定したもの(農林水産省「令和2年度チーズの需給表」から引用)。
(酪農乳業部 古角 太進)