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国内の需給動向【畜産統計】 畜産の情報 2021年9月号

畜産統計

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 農林水産省が令和3年7月9日に公表した「畜産統計(令和3年2月1日現在)」について、肉用牛、乳用牛、豚、ブロイラーおよび採卵鶏の概要を以下の通り報告する。
 なお、昨年は2020年農林業センサス実施年のため、豚、ブロイラーおよび採卵鶏の調査は行われていない。このため、本稿においては、前回調査結果との比較対象を、肉用牛および乳用牛は2年、豚、ブロイラーおよび採卵鶏は平成31年とした。

【肉用牛】令和3年の肉用牛飼養頭数は、前年比増

肉用種、乳用種ともに増加
 肉用牛の飼養戸数は、生産者の高齢化などにより離農が進んでいることから減少傾向にあり、令和3年は4万2100戸(前年比4.1%減)と前年からやや減少した(表3)。一方、飼養頭数は繁殖基盤の強化が図られたことから増加傾向にあり、260万4000頭(同1.9%増)となった(図21)。この結果、肉用牛の1戸当たり飼養頭数は、前年から3.7頭増加して61.9頭となり、大規模化が進んでいることが分かる。
 肉用牛は、肉用種および乳用種(注1)に大別され、飼養頭数のうち7割が肉用種(182万9000頭、前年比2.1%増)、3割が乳用種(77万5200頭、同1.5%増)となった(図22)。

(注1)「畜産統計」では、肉用牛の乳用種とは、ホルスタイン種、ジャージー種などの乳用種のうち、肉用を目的に飼養している牛で、交雑種を含むと定義されている。





 
 さらに肉用種の内訳を見ると、子取り用めす牛が前年比1.7%増の63万2800頭(全体に占める割合は24%)、育成牛が同3.0%増の39万6600頭(同15%)、肥育用牛が同1.9%増の79万9400頭(同31%)といずれも増加した。平成27年まで5年連続して減少していた子取り用めす牛は28年に増加に転じ、繁殖基盤の強化が図られている。また、乳用牛への受精卵移植による和子牛の生産拡大なども、育成牛および肥育牛の増加につながっている。
 乳用種の内訳を見ると、交雑種が前年比6.1%増の52万5700頭(全体に占める割合は20%)、ホルスタイン種ほかが同6.9%減の24万9400頭(同10%)となった。

「200頭以上」の階層で肉用牛飼養頭数全体の約6割
 肉用牛の総飼養頭数規模別に見ると、飼養戸数は、1〜4頭(前年比9.3%減)、5〜9頭(同7.1%減)、10〜19頭(同3.7%減)、20〜29頭(同3.2%減)の4階層はいずれも前年を下回ったのに対し、30〜49頭(同2.7%増)、50〜99頭(同0.8%増)、100〜199頭(同1.4%増)、200〜499頭(同1.4%増)、500頭以上(同2.8%増)の5階層はいずれも前年を上回った(図23)。飼養頭数の少ない層は減少、多い層では増加したことから、大規模化の進展がうかがえる。
 階層別に見ると、1〜4頭の階層が最も多く9700戸、次いで5〜9頭が8260戸、10〜19頭が7770戸となった。なお、全体に占める割合は、1〜4頭が23%、5〜9頭が20%、10〜19頭が18%であり、3階層の合計は全体の61%となり前年から2ポイント減少した。
 また、全体の2%を占める500頭以上の階層は764戸、同3%を占める200〜499頭の階層は1420戸となり、全体に占める割合はともに前年並みとなった。


 肉用牛の総飼養頭数規模別に見ると、飼養頭数は、飼養戸数と同様に、1〜4頭(前年比9.1%減)、5〜9頭(同6.6%減)、10〜19頭(同3.1%減)、20〜29頭(同2.9%減)の4階層はいずれも前年を下回ったのに対し、30〜49頭(同2.9%増)、50〜99頭(同1.3%増)、100〜199頭(同1.4%増)、200〜499頭(同1.9%増)、500頭以上(同3.9%増)の5階層はいずれも前年を上回った(図24)。
 階層別に見ると、500頭以上の階層が最も多く、飼養頭数全体の42%を占める108万3000頭、次いで200〜499頭の階層が全体の17%を占める44万5000頭となった。200頭以上の飼養規模での頭数は全体の59%と前年を1ポイント上回り、大規模経営で多くの肉用牛が飼養されていることが分かる。


(畜産振興部 前田 絵梨)

【乳用牛】令和3年の北海道乳用牛飼養頭数は前年比1.0%増

1戸当たりの飼養頭数、前年比3.9%増
 令和3年2月1日現在の乳用牛飼養戸数は前年から500戸減少し、1万3900戸(前年比3.5%減)となった(表4)。これを全国農業地域別に見ると、北海道は5720戸(同2.1%減)、都府県は8150戸(同4.3%減)といずれも減少した。また、同日現在の乳用牛飼養頭数は、135万6000頭(同0.3%増)となり、北海道が83万300頭(同1.1%増)と増加した一方、都府県は52万6000頭(同1.0%減)と減少した。1戸当たりの飼養頭数は、北海道が145.2頭(同3.3%増)、都府県が64.5頭(同3.4%増)といずれも増加し、全国としても97.6頭(同3.9%増)と、規模拡大が進展している。なお、都府県の中で飼養頭数が前年を上回ったのは近畿地域(同0.4%増)、中国地域(同0.2%増)および沖縄地域(同1.4%増)であり、1戸当たり飼養頭数はすべての地域で増加している。

 
「100頭以上」の階層で乳用牛飼養戸数および頭数、ともに増加
 乳用牛飼養戸数を、乳用牛の成畜(満2歳以上の牛)の飼養頭数規模別に見ると、全体の14.6%を占める「100頭以上」の階層が前年に比べ3.5%増加(うち「200頭以上」は、8.7%増加)した一方、「100頭未満」の階層はいずれも減少した(表5)。
 また、乳用牛飼養頭数を同様に規模別に見ると、「100頭以上」の階層が63万4400頭と全体の46.8%を占め、前年に比べ5.5%増加する一方、「100頭未満」の階層はいずれも減少した。特に、「200頭以上」の階層は35万3500頭と最も多く、全体の26.1%を占めた。


乳用牛からの子牛出生頭数、いずれも高水準で推移
 直近1年間(令和2年2月〜3年1月)の乳用牛からの子牛出生頭数(受精卵移植による和子牛は含まない)は、69万9100頭(前年比1.0%減)と、前年(平成31年2月〜令和2年1月)からわずかに下回ったものの、直近5カ年の中では、2番目に高い水準となった(図25)。内訳を見ると、乳用種めすが26万3800頭(同4.7%減)、乳用種おすが16万2900頭(同8.9%減)といずれも減少したのに対して、交雑種は27万2400頭(同8.8%増)と増加した。全体に占める割合はそれぞれ、乳用種めすが37.8%、乳用種おすが23.3%、交雑種が38.9%となった。また、乳用牛からの子牛出生頭数のうち、乳用種の雌雄比率を見ると、61.8%対38.2%(前年の同比率は60.7%対39.3%)となっており、性判別精液の活用などによる乳用後継牛確保の取り組みが進んでいる状況にある。


 (酪農乳業部 小木曽 貴季)

【豚】令和3年の豚飼養頭数は、平成31年比増

子取り用めす豚は減少するも、肥育豚は増加
 豚の飼養戸数は、小規模層を中心に減少傾向にあり、令和3年は3850戸(平成31年比10.9%減)と平成31年からかなりの程度減少した(表6)。また、飼養頭数は、23年以降、おおむね減少傾向で推移している中、令和3年は929万頭(同1.5%増)と平成31年を上回ったものの、直近で増加が見られた29年の水準を下回っている(図26)。内訳を見ると、子取り用めす豚は同3.5%減、種おす豚は同11.8%減と減少した一方、肥育豚は同1.1%増、その他(販売される肥育用のもと豚を含む)は同12.7%増となった。
 また、豚の1戸当たり飼養頭数は増加傾向にあり、31年から293.6頭増加して2413頭となり、大規模化が進んでいる。
 なお、近年、肥育豚の飼養頭数は減少傾向にあるが、産肉能力の向上により豚肉生産量(部分肉ベース)は増加傾向で推移している。

 
 
肥育豚飼養頭数規模別の飼養頭数割合は「3000頭以上」の階層で全体の約7割
 肥育豚の飼養頭数規模別に見ると、飼養戸数は、すべての階層で平成31年を下回った。階層別に見ると最も多かったのは2000頭以上の階層で全体の29%を占める997戸(31年比3.2%減)、次いで1000〜1999頭の階層が同21%の718戸(同5.0%減)、500〜999頭の階層が同19%の679戸(同16.5%減)となった(図27)。これらの階層の合計は全体の69%となり、31年から3ポイント上回った。なお、3000頭以上の階層は全体の20%となった。
 また、31年から最も減少率が大きいのは1〜99頭の階層で、31年比26.9%減と大幅な減少となった。


 肥育豚の飼養頭数規模別に見ると、飼養頭数は、2000頭以上の階層が最も多く、全体の78%を占める688万頭(同3.2%増)となった(図28)。このうち3000頭以上の階層は609万5000頭(同4.7%増)と全体の69%を占め、大規模経営で多くの豚が飼養されていることが分かる。

【ブロイラー】令和3年のブロイラー飼養羽数・出荷羽数は、平成31年比増

飼養羽数・出荷羽数は、ともにわずかに増加
 ブロイラーの飼養戸数は、2160戸(平成31年比4.0%減)、出荷戸数は2190戸(同3.1%減)といずれも31年から減少した(表7、図29)。また、ブロイラーの飼養羽数(注2)は1億3965万8000羽(同1.0%増)、出荷羽数(注3)は7億1383万4000羽(同2.7%増)と、いずれも増加し、生産が拡大していることがうかがえる。
 なお、増加傾向にあるブロイラーの1戸当たり飼養羽数は、31年から3300羽増加し6万4700羽、1戸当たりの出荷羽数は1万8300羽増加し32万6000羽となり、大規模化が進んでいることが分かる。

(注2)飼養羽数とは、2月1日現在で飼養している鶏のうち、ふ化後3カ月未満で出荷予定の鶏の飼養羽数をいう。

(注3)出荷羽数とは、前年2月2日〜本年2月1日の1年間に出荷した羽数をいう。2月1日現在で飼養を休止し、または中止している場合でも、年間3000羽以上の出荷があれば、羽数が計上されている。




 
「50万羽以上」の階層でブロイラー出荷羽数全体の約5割
 ブロイラーの出荷羽数規模別に見ると、出荷戸数は、10万〜19万9999羽の階層が最も多く、全体の31%を占める665戸(平成31年比3.9%減)となった(図30)。階層別に見ると、31年から増加したのは、同17%を占める30万〜49万9999羽の階層(368戸(同1.7%増))および同14%を占める50万羽以上の階層(298戸(同5.7%増))となり、大規模層で増加したが、その他の階層はいずれも減少したことから、全体では減少した。


 ブロイラーの出荷羽数規模別に見ると、出荷羽数は、50万羽以上の階層が最も多く、全体の48%を占める3億4302万5000羽(同6.7%増)となった(図31)。31年に対する増加率が最も大きいのも同階層で、全体に占めるシェアも31年の46%から2ポイント増加しており、大規模層の出荷羽数の増加が鶏肉生産量の増加につながっているとみられる。

 

【採卵鶏】令和3年の採卵鶏飼養羽数は、平成31年比減

ひな、成鶏めすともにわずかに減少
 採卵鶏の飼養戸数は、小規模層を中心として減少傾向にあり、令和3年は1880戸(平成31年比11.3%減)と、31年からかなり大きく減少した(表8)。また、飼養羽数は、ひなは4022万1000羽(同0.9%減)、成鶏めすは1億4069万7000羽(同0.8%減)と、ともに31年を下回った。近年増加傾向で推移していた成鶏めすの飼養羽数は、令和3年は減少に転じたものの、平成31年に続き1億4000万羽台となった(図32)。なお、令和3年の減少は、高病原性鳥インフルエンザの発生の影響によるものと考えられる。また、増加傾向にある1戸当たりの成鶏めすの飼養羽数は前年から7900羽増加して7万4800羽となり、大規模化が進んでいることが分かる。

 

「10万羽以上」の階層で成鶏めすの飼養羽数全体の8割
 成鶏めすの飼養羽数規模別に見ると、飼養戸数は、1万〜4万9999羽の階層が最も多く、全体の29%を占める499戸(平成31年比16.6%減)、次いで1000〜4999羽の階層で同25%を占める429戸(同15.6%減)となった(図33)。階層別に見ると、31年から増加したのは、全体の20%を占める10万羽以上の階層のみで334戸(同1.5%増)となった。


 成鶏めすの飼養羽数規模別に見ると、飼養羽数は、10万羽以上の階層が最も多く、全体の80%を占める1億1253万5000羽(同4.5%増)となった(図34)。また、階層別に見ると、31年から増加したのは同階層のみで、その他の階層はいずれも減少しており、大規模層の飼養羽数の増加が全体の飼養羽数の増加につながっていることが分かる。

 
(畜産振興部 前田 絵梨)