減少続けるフィードロット飼養頭数
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)の「Cattle on Feed」によると、2021年6月のフィードロット導入頭数は前年同月比7.1%減の167万頭、出荷頭数は同2.7%増の202万2000頭となった。その結果、7月のフィードロット飼養頭数は1129万頭で前年同月を1.3%下回った(図1)。この数字は本年2月のピーク時よりも6.7%の減少となっている。現地報道では、21年初頭の食肉処理施設での労働力不足などによると畜が滞った状況が改善されたことを要因としており、当面の間、出荷頭数が増えることからフィードロット飼養頭数は減少傾向で推移するとみられている。
また、同じくUSDA/NASSが公表した「Cattle」によると、7月1日時点の牛総飼養頭数は1億90万頭と前年を1.3%下回った(表1)。内訳を見ると、乳用牛の繁殖雌牛は前年比1.6%増の950万頭、乳用繁殖後継牛は同2.5%増の410万頭と共に増加しているものの、肉用牛の繁殖雌牛は同2.0%減の3140万頭、肉用繁殖後継牛は同2.3%減の430万頭と減少している。肉用繁殖経営における飼養頭数の減少は、西部を中心とした広範囲の干ばつも一因であるとみられている。
今後の総飼養頭数増減の目安となる子牛生産頭数を見ると、18年のピーク時から徐々に減少しつつある。このため現地では、総飼養頭数およびフィードロット飼養頭数の減少は今後も続くとみられている。一方で、肉牛生産者にとっては、牛の供給減少と牛肉需要の高まりにより、今後、子牛、導入もと牛、肥育牛の価格はいずれも上昇が見込まれているが、それを上回る飼料穀物やサプリメントなどの価格の上昇も見込まれるため、収益性の低下が予想されている。
旺盛なアジア需要を受け、5月の輸出量は過去最高を記録
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2021年5月の牛肉輸出量は14万4395トン(前年同月比68.9%増)と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)の影響で輸出量が減少した前年同月から大幅に増加した。また、この数字はパンデミック前の2019年同月と比較しても16.7%増となっている。経済回復に伴う世界的な牛肉需要の高まりを背景に3月から堅調な推移が続いており、5月の輸出量は単月実績として過去最高となっている(図2)。
同月の輸出量を輸出先別に見ると、韓国、日本、中国向けの増加が大きく影響している(表2)。首位の韓国向けは3万7958トン(同69.6%増)で単月の輸出実績としては過去最高を記録した。USDAによると、韓国国内の旺盛な需要に加え、米韓自由貿易協定に基づき21年1月から牛肉の輸入関税率の引き下げが行われたことが増加の要因とされている。また、第2位の日本向けは、3万6728トン(同41.4%増)と大幅に増加している。本年3月18日から日米貿易協定に基づく30日間のセーフガード発動を受け、本年1〜5月の累計では前年同期比6.6%減となったものの、同協定に基づき21年度の関税率が引き下げられたことから輸出量は回復している。また、大幅な増加が続いている中国向けは前年同月比約10倍となる2万997トンとなった。USDAは、米中経済貿易協定の第1段階の合意により、米国産牛肉の大部分が中国市場に輸出可能となったことに加え、同国国内の豚肉供給不足を補うための動物性たんぱく質需要が堅調であることが牛肉輸出増加の一因と分析している。
USDAは、これら旺盛なアジアの輸入需要を受け、21年の牛肉輸出量の予測値を155万2193トンに、22年は150万5927トンにいずれも上方修正した。
(調査情報部 上村 照子)