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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2021年9月号

良好な天候を背景に牛群再構築が急速に進展

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牛の価格上昇に伴い、平均枝肉重量は増加の見通し
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が四半期に一度公表している豪州肉用牛産業の見通しによると、2021年度(21年7月〜22年6月)の飼養頭数、平均枝肉重量、生産量は、推定値ながらも前回公表(21年4月)からいずれも上方修正された。このうち飼養頭数は2605万頭(前年度比6.0%増)とされ、引き続き牛群再構築の進展が見込まれている(表3)。また、近時の肉牛の価格上昇に加え、豪州気象局(BOM)の予報では今後も降雨に恵まれた良好な天候が続くとされることで、潤沢な飼料供給が見込まれることなどを理由に、平均枝肉重量は311.7キログラム(同5.7%増)と増加が見込まれている。一方、と畜頭数は630万頭(同12.1%減)と下方修正された。生産量は、と畜頭数の減少が見込まれるものの平均枝肉重量の増加から196万4000トン(同7.0%減)と減産ながら上方修正された。なお、MLAによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入国制限などにより、食肉加工部門では最大4000人の雇用が不足しており、と畜頭数減少の一因になっているとしている。
 

  また、家畜市場での取引頭数が増加傾向であるにもかかわらず、牛群再構築に向けた高い牛の需要を背景に、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は依然として高値を探る動きを見せ、7月26日に過去最高となる1キログラム当たり1004豪セント(833円:1豪ドル=83円)となり、記録更新を続けている(図3)。
 

  MLAでは、豪州の東部と北部の大部分で降雨による良好な放牧環境が維持されていることや、子牛生産のための若齢雌牛の頭数が多いこと、また、牛の健康と栄養管理に多くの資金が投入されていることなどが、牛群再構築を予想以上に早める要因になっていると分析している。
 牛の取引頭数の増加と購買者の需要が落ち着くことなどが見込まれる中、MLAの予測データによると、記録的な高値で推移するEYCIは、年内には同874豪セント(725円)まで下落するとされている。

輸出量は依然低水準
 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、と畜頭数の減少などにより2021年6月の牛肉輸出量は7万3551トン(前年同月比23.8%減)となった。さらに、同年1〜6月の累計は42万2412トン(前年同期比23.7%減)といずれも大幅に減少した(表4)。
 輸出先別に見ると、日本向けは2万1000トン(前年同月比3.3%減)とやや減少し、1〜6月の累計では11万1890トン(前年同期比18.8%減)と大幅に減少している。韓国向けは1万2480トン(前年同月比17.5%減)と大幅に減少し、1〜6月の累計でも7万6181トン(前年同期比1.9%減)とわずかに減少している。米国向けは1万2163トン(前年同月比53.5%減)、1〜6月の累計では6万5233トン(前年同期比43.1%減)と、いずれも大幅に減少している。
 
 
(調査情報部 国際調査グループ)