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海外の需給動向【牛肉/アルゼンチン】 畜産の情報 2021年9月号

2021年牛肉生産量、減少傾向で推移

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2021年5月牛と畜頭数、前年同月比15.4%減
 アルゼンチン農牧漁業省によると、2021年1〜5月の牛と畜頭数は前年同期比6.0%減の523万4000頭とされた(図5)。20年の牛と畜頭数は、19年に続き中国向け輸出需要が強かったこと、また、肉牛価格が高値で推移したことや多くの地域で乾燥気候となったことなどから高水準で推移したが、21年はその反動もあり減少している。特に本年5月は、96万9000頭(前年同月比15.4%減)と前年同月をかなり大きく下回った。
 牛肉生産量は、2017年から4年連続で増加して推移したが、21年1〜5月の実績を見ると、と畜頭数の減少を反映して前年同期比5.1%減の118万3000トンと減少傾向で推移している(図6)。
 



  2021年1〜6月牛肉輸出量は増加を維持するものの今後は減少の見込み
 アルゼンチン国家統計院によると、2021年1〜6月の牛肉輸出量は、前年同期比7.0%増の29万1037トンと、かなりの程度増加した(表6、図7)。
 


 
  輸出先別に見ると、輸出量全体の79%を占める中国向けは、近年、経済発展に伴う所得の増加などによる牛肉の需要拡大に加え、18年に同国で発生したアフリカ豚熱に伴う代替需要から大幅に増加している。なお、20年は、2〜3月にかけて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による中国国内での港湾の物流停滞や消費の落ち込みなどにより輸出量が減少したものの、その後は回復している。21年1〜6月の中国向け輸出量は、同9.0%増と増加傾向を維持しており、アルゼンチンの牛肉輸出をけん引している。一方、輸出額は、米ドルに対するアルゼンチンペソ安を反映し同6.9%減とかなりの程度減少した結果、輸出単価は同14.6%減とかなり大きく低下した(図8)。また、中国に次ぐ輸出先であるチリ(同14.7%増)、イスラエル(同22.1%増)向けは増加した。一方、18年12月に生鮮牛肉の輸出が再開され20年に急増した米国向けは、同17.4%減と減少に転じた。
  なお、21年6月の輸出量は、前年同月比31.1%減の3万4116トンと大幅に下回った。これは、アルゼンチン政府が5月20日から牛肉輸出制限を講じたため(後述参照)であり、7月以降も減少傾向が続くとみられる。
 

肥育牛(去勢)出荷価格は上昇傾向が加速
 肥育牛(去勢)の出荷価格は、近年、堅調な牛肉の輸出需要やインフレの進行などにより、アルゼンチンペソ建てで見ると上昇傾向で推移している。アルゼンチンの肉用牛相対取引の指標とされるリニエルス家畜市場における2021年5月の出荷価格は、前年同月比108.3%高の1キログラム当たり178.52ペソ(約209円:1ペソ=1.17円)と1年間で2倍以上となり、価格の上昇傾向が加速している(図9)。
 

  こうした中、アルゼンチン政府は5月、最近数カ月間にわたり上昇を続ける国内牛肉価格を抑制し、国内消費を回復させるための対策として、牛肉の輸出を5月20日から30日間停止する措置を講じた。その後同国政府は6月22日に牛肉輸出の再開を決定したが、輸出量の上限設定や一部品目を輸出対象から除外するなど条件を付けており、21年末まで何らかの輸出制限が継続されることとなった(注)

(注)海外情報「アルゼンチン政府、30日間の牛肉輸出停止措置を公表」
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002955.html)、「アルゼンチン、条件付きで牛肉輸出再開を決定」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002990.html)を参照されたい。


1人当たり牛肉消費量は引き続き減少
 アルゼンチン農牧漁業省によると、1人当たりの牛肉年間消費量(1〜12月の各月に公表される年間消費量の平均値)は、長期的に減少傾向で推移している。さらに、2021年1〜5月の平均消費量は、COVID-19による経済状況の悪化などを反映して、49.2キログラムと50キログラム台を下回る水準まで減少した(図10)。
 
 
(調査情報部 井田 俊二)