5月の生乳出荷量は、前年同月を2.3%上回る
欧州委員会によると、2021年5月の生乳出荷量(EU27カ国)は前年同月をわずかに上回る1338万6200トン(前年同月比2.3%増)となった(図22)。
5月の出荷量を国別に見ると、ドイツ(同0.0%増)、オランダ(同0.0%減)が前年同月並みとなった一方、生乳出荷量第2位のフランス(同2.6%増)が増産傾向に転じたほか、アイルランド(同6.1%増)、ポーランド(同1.5%増)、イタリア(同10.6%増)、スペイン(同1.0%増)、デンマーク(同0.5%増)、ベルギー(同2.7%増)など主要生産国はいずれも前年同月を上回った(表10)。
なお、欧州委員会が7月5日に公表した農畜産物の短期的需給見通し
(注)では、例年にない寒波で春先の生乳出荷量が減少したとしている。その後、平年並みの気温となった5月の降雨で牧草の生育状況が良好となったため、5〜6月にかけて生乳出荷量は回復し、通年では前年比0.8%増と前年を上回って推移すると見込まれている。
(注)海外情報「欧州委員会、生乳・乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)」
(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003009.html)を参照されたい。
6月の生乳取引価格は前年同月をかなりの程度上回る
欧州委員会によると、EUの平均生乳取引価格は、バターの供給がひっ迫していたことに加え、中国の輸入需要による国際相場上昇に伴い、例年では春先から夏の時期にかけて生乳生産量の増加とともに同価格が下落していく季節傾向とは反対に上昇傾向で推移している。6月の同価格(推定値)は、100キログラム当たり35.95ユーロ(4745円:1ユーロ=132円)と前年同月比10.4%高となった(図23)。なお、春先から夏の時期にかけて同価格が上昇傾向で推移するのは2014年以来のこととなるが、EUの生乳出荷量が3月から3カ月連続で前年同月を上回って推移していることに加え、米国やオセアニアの乳製品相場も下落傾向にあることから、今後の価格動向が注目されている。
飲用乳などの輸出量は前年同期比増
欧州委員会によると、飲用乳など(飲用乳、クリームおよびヨーグルト)の2021年1〜4月の輸出量は、飲用乳で40万9631トン(前年同期比2.7%増)、クリームで9万6529トン(同37.5%増)、ヨーグルトで11万1504トン(同40.0%増)となった(表11)。当該輸出量のうち、中国向けが飲用乳で56%、クリームで46%と大きな割合を占めている。
前述の農畜産物の短期的需給見通しによると、中国向けの輸出量の増加要因として、飲用乳は中国の乳価上昇により、同国国内での加工用としてEU産への需要が増加したこと、また、クリームは中国の外食産業の再開による需要回復が挙げられている。なお、ヨーグルト輸出量の増加は、主に英国向けの増加によるものとされている。
輸出が好調な一方で、1〜5月の飲用乳などの生産量は、飲用乳で前年同期比0.6%減、クリームで同3.4%増、はっ酵乳で同2.4%減となった。
飲用乳の生産量は前年同期を0.6%下回ったものの、昨年の春から秋にかけて増産していたことを考慮すると、21年末まで安定的に推移すると見込まれている。また、クリームは、前年同期を3.4%上回ったものの、今後はより多くの乳脂肪分がバターや全粉乳の生産に向けられることから、年間では前年比0.5%増とわずかな増加にとどまるものと見込まれている。
EUの飲用乳などの輸出が堅調であるとしても、これらは主にEU域内で消費されている。21年のEU域内での飲用乳などの消費量は、昨年の例外的な巣ごもり需要による高水準な消費を超える可能性は低く、前年を0.5%下回ると見込まれている。
(調査情報部 小林 智也)