農産物価格指数(総合)
(注1)は、畜産物、米などの価格が下落したものの、果実、野菜などの価格が上昇したことにより、前年比1.6%上昇し111.0となった(図26)。
畜産物の指数は、肉用牛や和子牛などの価格が下落したことから、同2.1%低下の102.0となった。
(注1)農産物価格指数(総合)の算出に用いる類別のウエイトは、全体を100とした場合、米は22.73、いもは2.13、野菜は25.82、果実は10.97、花きは5.02、畜産物は29.00などとなっている。
畜産物のうち肉用牛を見ると、前年はいずれも100を上回ったのに対し、令和2年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、いずれも下回った(図27)。前年からの騰落率が最も大きかったのは乳用肥育(交雑種)で、同11.7%低下の89.8となった。また、めす肥育和牛は同11.0%低下の93.5、去勢肥育和牛は同9.8%低下の95.9、乳おす肥育(ホルスタイン種)は6.4%低下の99.0と、いずれも平成28年以降初めて100を下回る結果となった。
月ごとの指数の動向を見ると、COVID-19の影響によるインバウンド需要や外食需要の減退などによる枝肉卸売価格の下落により、4月には、めす肥育和牛が77.0、去勢肥育和牛が74.8、6月には乳用肥育(交雑種)が79.4まで低下した(図28)。その後、緊急事態宣言解除後の経済活動の再開や輸出の回復などに伴う枝肉卸売価格の上昇に伴い、12月にはめす肥育和牛が111.3、去勢肥育和牛が113.0、乳用肥育(交雑種)が101.4まで上昇し、動きの大きい1年となった。一方、乳おす肥育(ホルスタイン種)は、他品種に比べて枝肉卸売価格の下落が緩やかだったことから、指数も緩やかな低下傾向で推移した。
肥育用乳子牛および和子牛の指数を見ると、近年、子牛価格の上昇などにより上昇傾向にあったが、2年はCOVID-19の影響により肉用牛同様、いずれも前年を下回った(図29)。前年からの騰落率が最も大きかったのは肥育用乳用(交雑種)で、同15.1%低下の107.0となった。また、和子牛(おす)は同11.9%低下の104.4、和子牛(めす)は同11.2%低下の103.7、肥育用乳用おす(ホルスタイン種)は同7.4%低下の115.6となった。
月ごとの指数の動向を見ると、肉用牛に連動するものになっており、黒毛和種や交雑種の肉用子牛価格が、COVID-19の影響による枝肉卸売価格の下落に伴い低下し、年末にかけて枝肉卸売価格の上昇に伴い上昇したため、肥育用乳用(交雑種)、和子牛(おす)、和子牛(めす)の指数も同様に推移した(図30)。なお、肥育用乳用おす(ホルスタイン種)は、近年の生産頭数の減少などにより、乳用種の肉用子牛価格が堅調に推移したことから、指数の振り幅はほかの品目と比べて小さくなった。
肉豚の指数は、COVID-19の影響による巣ごもり需要が旺盛となったことなどから、同5.7%上昇し97.5となった(図31)。
枝肉卸売価格は、と畜頭数が減少する夏場に上昇し、と畜頭数が増加する秋に下落する傾向がある。指数も同様の傾きとなり、2年の月ごとの指数の動向を見ると、おおむね例年と同様の傾向で推移した。2月および3月の指数は暖冬の影響で増体が進み供給量が増加したため枝肉卸売価格が下落したことから前年同月より低い水準であったが、その後、COVID-19の影響による巣ごもり需要が高まったことから枝肉卸売価格が前年を上回る水準で推移したことに伴い、指数も4月以降はいずれの月も前年同月を上回って推移した。
なお、平成28年以降で100を上回ったのは29年のみで、これは、豚流行性下痢(PED)の発生により出荷頭数が減少したことなどから枝肉卸売価格が例年より高い水準であったことによると考えられる。
ブロイラーの指数はCOVID-19の影響による巣ごもり需要が旺盛となったことなどから、同1.9%上昇し、99.0となった(図32)。
鶏肉生産量は、消費者の根強い国産志向や健康志向などを背景に増加傾向で推移している。鶏肉は、部位により仕向け先が異なることから、主にテーブルミートに仕向けられるもも肉と、総菜やチキンナゲット、ソーセージなど主に加工・業務利用の多いむね肉で価格動向は異なる。国内の生産拡大により需要を上回る供給が続いたことなどから、令和元年の卸売価格が前年を下回ったことに伴い、元年のブロイラーの指数も前年を下回った。2年に入っても同様の傾向が続き、月ごとの指数は前年同月を下回って推移していたものの、もも肉はCOVID-19の影響による巣ごもり需要で量販店を中心に引き合いが強かったこと、むね肉は加工用および量販店需要が好調であったことなどから、卸売価格が前年を上回って推移したことに伴い、指数も5月以降はいずれの月も前年同月を上回って推移した。
生乳の指数は同0.5%上昇し、106.1となった(図33)。基準年となる平成27年から5年連続の上昇となった。また10キログラム当たり全国年平均価格は1055円となった。
農業物価統計調査(平成27年から令和元年の各年確報)における生乳の総合乳価は、生乳取引価格から集送乳経費や手数料を控除し、加工原料乳生産者補給金などを加算したものであり、酪農家の受取乳価であると考えられる。総合乳価は、平成19年度以降の配合飼料価格の高騰もあり、20年度に飲用・乳製品向けいずれも生乳取引価格が引き上げられ、その後も上昇して推移している。
鶏卵の指数は、同1.4%上昇し81.3となった(図34)。
近年の鶏卵の需給動向を見ると、鶏卵を使用したデザートやマヨネーズなどの加工向けを含めた旺盛な需要を背景に鶏卵の生産拡大が進み、需要を上回る供給が続いたことから、鶏卵の指数は28年以降いずれの年も100を下回って推移している。
令和2年は、COVID-19の影響により、業務・加工用の鶏卵の需要が大幅に減少したことから卸売価格は低水準で推移したが、月ごとの指数の動向を見ると、1〜4月において前年同月を大きく上回ったことから、年全体で見ると3年ぶりに前年を上回る結果となった。