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海外の需給動向【牛肉/カナダ】 畜産の情報 2021年10月号

輸出は好調ながらも、増産の見通しは不明

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総飼養頭数は前年並み
 カナダ統計局(Statistics Canada)によると、2021年7月1日時点の牛総飼養頭数は1228万5000頭(前年比0.2%増)と前年並みとなった。これまで度重なる干ばつなどで牛群の拡大が阻まれていたカナダにとって、7月1日時点の頭数が前年より増加したのは、17年以来である。カナダ肉用牛生産者協会(CCA)の市場分析部門であるCanFaxによると、17年から続く同国西部を中心としたフィードロットの導入需要により、米国からの肥育もと牛の導入が増加した一方、米国向けの生体牛輸出が減少したことが要因と分析している。なお、カナダと米国間の生体牛の移動は、カナダの輸出超過の傾向にあるが、5、6月は輸入超過となっている(図4)。


 総飼養頭数の内訳を見ると、肉用繁殖雌牛は355万頭(前年比1.7%減)となった(表2)。これは、2002年のピーク時から約130万頭の減少となっており、1988年以来の低水準である。一方、肉用後継牛は65万5000頭(同3.8%増)とやや増加しているが、CanFaxによると、この頭数は流動的なもので去勢牛が前年割れしていることもあり、今後の天候や飼料環境によっては、肥育もと牛としてフィードロットへ導入される後継牛が増える可能性もあると述べている。


飼料費の高騰により損益悪化
 CanFaxによると、フィードロットの経営は2018年4月から収益悪化が続いており、今年5月に一時黒字になったものの、6、7月は再び赤字になっている(図5)。この要因として、飼料価格上昇の影響が挙げられている。
 カナダでの飼料穀物の中心となる大麦の価格は、干ばつなどの天候不順による供給減少に加えて、中国向けなど好調な輸出需要を背景に、17年後半から上昇基調で推移しており、21年は在庫量のひっ迫などから、さらに高騰している(図6)。また、昨年まで比較的安価であった米国産のトウモロコシ価格が高騰していることも、フィードロットの損益悪化に拍車をかけている。




カナダ産牛肉輸出は堅調に推移
 2021年上半期(1〜6月)のカナダの牛肉輸出量は、21万2455トン(前年同期比26.1%増)と堅調に推移した(表3)。輸出先別に見ると、最大の輸出先である米国向けは15万1383トン(同16.6%増)と引き続き増加基調にあり、米国に次ぐ輸出先である日本向けも2万3591トン(同33.2%増)と、これら上位2カ国で総輸出量のおよそ8割を占めている。第3位の中国向けも9832トン(同約2.5倍)と大幅に増加し、6月単月の輸出量では2381トン(前年同月比約8.6倍)を記録した。中国の輸入需要は依然として高く、引き続き堅調に推移すると予測されている。また、第4位のメキシコ向けは、輸出量は増加しているが、平均単価が下がっている。CanFaxは、メキシコ経済の低迷により、需要が低価格部位にシフトしていると分析している。また、全体の輸出に占める割合は少ないが、ベトナム、フィリピン向けの輸出量も大きく増加しており、アジア市場向けの伸びが目立つ。
 

(調査情報部 上村 照子)