ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 牛肉生産量、輸出量ともに回復の兆し
と畜頭数、牛肉生産量がともに増加に反転
豪州統計局(ABS)が2021年8月に公表した統計によると、本年6月の牛と畜頭数は150万1700頭(前年同月比18.6%減)と大幅に減少したが、前回公表(本年3月)の145万2800頭からやや増加し、20年3月以降の減少傾向から増加に転じた(図7)。これに伴い、牛肉生産量も46万5100トン(同12.7%減)とかなり大きく減少したが、前回公表の45万900トンからはやや増加した。
また、豪州フィードロット協会(ALFA)によると、21年4〜6月期の牛と畜頭数のうち、穀物肥育牛が67万5302頭(全体の45%)となっており(注1)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などによる不透明な市場環境下でも、フィードロットにおける安定供給の強みが、穀物肥育牛の高いと畜割合を維持させているとしている。
(注1)海外情報「2021年6月末のフィードロット飼養頭数、過去2番目の高水準(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003030.html)を参照されたい。
他方で、豪州の牛群の縮小や再構築に関する指標である、全体のと畜頭数に占める雌牛の割合「FSR」(注2)を見ると、21年6月は47.7%と前回公表(本年3月)の44.5%から上昇している(図8)。これについて同国の畜産調査会社であるトーマス・エルダー・マーケッツの市場分析担当者は、好調な肉牛価格を背景に、雌牛をと畜に回す一部の生産者が存在することなどから、牛群の再構築のペースがやや鈍化していると指摘している。
(注2)同値が47%を超えた場合には牛群が縮小に向かうとされ、47%以下の場合、牛群が再構築段階に入るとされている。
肉牛生体取引価格は続伸
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、8月24日に過去最高となる1キログラム当たり1028豪セント(843円:1豪ドル=82円)となり、記録更新を続けている(図9)。
豪州気象局(BOM)によると、豪州東部のほとんどの地域で春季(9〜11月)の降雨量が年平均値を60%以上の確率で上回ると予測されていることから(図10)、引き続き良好な放牧環境下で牛の保留意欲は高く維持され、牛群再構築が進むとみられている。このため、業界関係者の間でも肉牛価格は今後も堅調に推移するとみている。
輸出量は一部で回復の兆し
豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2021年7月の牛肉輸出量は8万1171トン(前年同月比8.6%減)となり、前月(同23.8%減)以前に比べると、減少幅は縮小してきている(表4)。また、本年1〜7月の累計は50万3582トン(前年同期比21.6%減)となった。
輸出先別に見ると、これまで主要輸出先は前年同月比でおおむね減少していたものの、21年7月は日本向けが2万4199トン(前年同月比15.6%増)と20年12月以来の増加に転じた。また、韓国向けも1万4006トン(同9.5%増)と増加に転じた。
一方で、米国向けは1万3875トン(同41.7%減)と大幅に減少している。この要因についてMLAは、米ドルに対する豪ドル高や豪州の肉牛価格の高騰、米国南西部を中心とした干ばつの影響による米国内の牛肉供給量の増加などの要因が重なったためとしている。
(調査情報部 国際調査グループ)