ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 生産コスト大幅上昇の一方で、鶏肉輸出量は増加傾向で推移
1〜6月の鶏肉輸出量、前年同期比5.0%増
ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2021年1〜6月の鶏肉輸出量は、前年同期比5.0%増の205万575トンと前年をやや上回った(表7)。鶏肉輸出は、飼料価格高により生産コストが上昇しているものの、米ドルに対するレアル安の為替相場など、輸出に有利な状況から増加傾向で推移している(図17)。
輸出先別に見ると、最大の中国向けは、同9.1%減の31万4732トンと前年をかなりの程度下回った。同国向けは20年10月以降前年同月を下回る月が多くなっているが、依然ブラジル産鶏肉への引き合いは強く、21年に入ってからも毎月4万6000〜5万6000トン輸出されている。
中国に次ぐ輸出先であるサウジアラビア向けは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により20年前半に減少したものの、その後回復し、21年1〜6月は同12.6%増の23万20トンとかなり大きく増加した。しかし、サウジアラビア食品医薬品庁(SFDA)は本年5月、ブラジルの11の鶏肉処理場からの輸入を停止することを決定した。報道によると、停止措置の理由は明らかにされていないが、同措置は5月23日から適用されており、今後の輸出への影響が懸念されている。なお、当該鶏肉処理場からの輸出は、同国向け輸出量の60%を占めるとされている。
また、日本向けは比較的安定しており、同4.0%減の19万5340トンとなった。このほか、南アフリカ共和国およびフィリピン向けが、前年同期を大幅に上回っている。
7月のトウモロコシ卸売価格、1年間で約2倍に上昇
ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)養鶏・養豚センター(CIAS)によると、最大の鶏肉生産州であるパラナ州のブロイラー生産コスト指数(2010年1月の生産コストを100とした指数)は、引き続き上昇基調で推移している。同指数は、18年4月から19年9月ごろまで220ポイント前後で推移していたが、その後上昇傾向で推移し、21年7月には400.8ポイント(前年同月比50.7%高)となった(図18)。
鶏肉生産コストの約7割は飼料費が占めるが、トウモロコシの卸売価格(マットグロッソ州)は、19年10月ごろから上昇傾向で推移し、21年7月には、前年同月比104.4%高の60キログラム当たり93.3レアル(2053円:1レアル=22円)と約2倍に上昇した(図19)。これは、国内外からのトウモロコシの需要が堅調であることに加え、主要生産地における降水量不足や中南部での霜や低温などの影響でトウモロコシの生産量が大きく下方修正されたことも影響しているとみられる(注)。
(注)海外情報「2020/21年度主要穀物の生産状況等の調査結果(第11回)を公表(ブラジル)」
(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003019.html)を参照されたい。
鶏肉卸売価格は依然上昇傾向で推移し記録的高値
サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、ブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州、名目価格)は、同国内でCOVID-19が拡大し始めた2020年3月から5月ごろにかけて下落し、1キログラム当たり3.8レアル(84円)程度となった。その後は、堅調な需要を背景に上昇傾向で推移している(図20)。21年8月には同8.4レアル(185円)と統計が開始された04年以降の最高値を更新した。
報道によると、世界最大の鶏肉輸出会社で鶏肉および豚肉処理事業などを展開する大手食品会社BRFの21年第2四半期決算は、飼料穀物高などのコスト高の影響で収益性が悪化したとしている。売り上げの50%以上を占める国内市場向けでは、販売量および販売価格はわずかに増加したものの、販売コストが大幅に増加した。また、輸出向けについても、米国向けは販売価格への転嫁が実現したものの、他の特定の輸出先市場においては鶏肉の在庫水準が高く、販売価格への転嫁が十分にできなかったためとしている。
(調査情報部 井田 俊二)