ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 2021年上半期の生産量は増加し、豚肉回帰で価格は下落傾向
2021年上半期の家きん肉生産量は前年増
中国農業農村部より発表された今年度の中国農業展望報告(2021-2030)によると、2021年の家きん肉の生産量は前年比3.0%増の2432万トンと見込まれている。また、中国国家統計局によると、21年上半期(1〜6月)の家きん肉生産量は前年同期比5.8%増の1075万トンとなった。
中国では、18年8月に発生が確認され、その後拡大したアフリカ豚熱により豚肉生産量が大きく減少し、20年から21年上半期を中心として豚肉の代替需要が喚起されたことから、家きん肉の生産規模が拡大したとみられている。
このような中、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は、21年の中国の鶏肉生産量(注)を前年比4.1%減の1400万トンと減産の予測をしている(表8)。これは、豚肉が同国の食生活に深く浸透し、政府による支援などで企業養豚などが急速に飼養頭数の回復を図った結果、21年に入り豚肉価格が下落し、需要が鶏肉から豚肉へと徐々に戻りつつあること、また、飼料価格が高騰する中で生体鶏価格が下落しており、中小規模の生産者を中心に利益の確保が困難になっていることが要因とされる。
(注)同国では、家きん肉生産量のうち約6割が鶏肉であるとされている。鶏肉の生産割合については『畜産の情報』2020年5月号「中国の肉用鶏産業の現状と鶏肉需給の見通し」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001123.html)を参照されたい。
2月の春節以降、鶏肉価格は下落
食肉の需要期となる2021年の春節(2021年は2月11〜17日)を過ぎ、家きん肉の増産や豚肉需要の回復などから、3月以降の鶏肉価格は下落傾向で推移している(図21)。
そのような中、飼料価格の高騰などを要因とした収益性の悪化により、経営体力の弱い中小規模の生産者を中心に
米国からの冷凍鶏肉輸入量が増加するも、全体としては前年並み
中国国内の鶏肉需要が落ち着く中で、2021年1〜7月の冷凍鶏肉輸入量は前年並みの82万1024トンとなった(表9)。輸入先別に見ると、製品の大きさや品質の高さから、もみじの主要な輸入先である米国は27万7922トン(前年同期比72.0%増)と前年を大幅に上回ったものの、ブラジルやロシア、タイなどの主要輸入先は前年を下回る数量となった。今後、物流改善による冷凍コンテナ不足の解消や鶏肉輸入に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検疫体制が整備されていくにつれ、22年の輸入量は価格優位性を背景に前年を上回ると見込まれている。
鶏肉調製品輸出量は輸入国の需要増により増加
2021年1〜7月の鶏肉調製品の輸出量は、14万4054トン(前年同期比10.2%増)と前年をかなりの程度上回った(表10)。最大の輸出先である日本向けは9万6876トン(同0.4%増)とわずかながら増加し、その他の輸出先でも前年を上回ったところが多い。特にフィリピン向けは、COVID-19の影響による需要減退を背景に昨年から同国の鶏肉生産量が減少しており、21年第1四半期は前年同期比11.2%減と大きく減少していること、また、同国の主要輸入先であるEUでの鳥インフルエンザの発生によりEU産鶏肉の輸入が減少していることから、大きく輸出を伸ばしている。
(調査情報部 海老沼 一出)