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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】 畜産の情報 2021年10月号

第2四半期の生乳生産量は前年同期を上回る

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6月の生乳出荷量は、前年同月を0.8%上回る
 欧州委員会によると、2021年6月の生乳出荷量(EU27カ国)は前年同月をわずかに上回る1253万3120トン(前年同月比0.8%増)となった(表11)。
 


 

 6月の出荷量を国別に見ると、最も多いドイツ(同1.3%減)が前年同月を下回った一方、フランス(同0.8%増)、オランダ(同0.4%増)、アイルランド(同3.7%増)、ポーランド(同0.7%増)、イタリア(同5.0%増)、スペイン(同0.4%増)など主要生産国の多くが前年同月を上回った。
 生乳出荷量を四半期ごとに見ると、第1四半期は寒波の影響から前年同期を下回ったものの、第2四半期は、天候が回復し、5月の降雨で牧草の生育状況が良好となったことから前年同期を上回った。この結果、本年上半期(1〜6月)の生乳出荷量は前年同期並みとなった(図22)。
  欧州委員会は、通年では前年比0.8%増と前年を上回ると予測しているため、下半期は前年同期を上回って推移していくものとみられる。
 


 

上半期は、チーズの生産量のみ前年同期を上回る
 欧州委員会によると、2021年上半期(1〜6月)のEUの主要な乳製品の生産量は、チーズが前年同期比2.9%増となった一方で、バター(同0.9%減)、脱脂粉乳(同3.7%減)、全粉乳(同12.1%減)はいずれも減少した(図23)。生乳出荷量が前年同期並みである中、輸出需要などを背景にチーズに仕向けられる生乳の割合が高まったことで、他の乳製品への仕向け割合が減少し、これら乳製品の生産量は前年同期を下回ったものとみられる。なお、通年ではいずれの乳製品の生産量も前年を上回ると予想されているため、生乳出荷量の増加に伴って各乳製品の生産量も増加傾向で推移するとみられている。
 


 

チーズの輸出量は米国向けが前年同期を大幅に上回る
 欧州委員会によると、2021年上半期(1〜6月)の英国を除くEU域外向けの乳製品輸出量は、チーズが47万9482トン(前年同期比7.2%増)と前年同期を上回った一方で、脱脂粉乳が41万4771トン(同0.3%減)と前年同期並み、全粉乳が14万4471トン(同7.8%減)、バターが9万2618トン(同20.7%減)と前年同期を下回った(表12)。
 


 

 チーズの輸出量は、日本向け(同6.6%減)、韓国向け(同8.7%減)が前年同期を下回った一方で、米国向け(同18.1%増)、スイス向け(同7.5%増)、ウクライナ向け(同11.8%増)が前年同期を上回った。米国とEUとの間で貿易紛争となっていた航空機補助金をめぐる追加関税措置において、米国側がEU産チーズを対象品目の一つとしていたが、本年3月に双方で追加関税措置の4カ月間の一時停止が合意され、その後、5年間は同措置を停止することで合意に至った(注)。今回の米国向けチーズ輸出量の増加は、この合意が即座に反映された結果とみられる。
 

(注)海外情報「EUと米国、航空機補助金を巡る追加関税措置の停止を合意(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002968.html)を参照されたい。
 

(調査情報部 小林 智也)