(1)家きん肉と卵の消費量
中国では、家きん肉および家きん肉製品の消費は増加し続けている。近年、中国の年間1人当たりの家きん肉消費量(全国平均)は増加傾向にあり、2013年の7.2キログラムから16年には9.1キログラムにまで増加している(図8)。
2016〜18年の年間1人当たりの家きん肉消費量は微減ないし横ばいだったが、18年にアフリカ豚熱が流行し、豚肉供給量が大幅に減少すると、その代替として食肉消費における家きん肉の重要性が増し、需要は急激に増加した。19年の年間1人当たりの家きん肉消費量は10.8キログラムに達し、前年比20.0%増と大幅に増加した。近年の家きん肉消費については、アフリカ豚熱の流行により食肉消費構造に変化が生じ、eコマース、コールドチェーン、加工および鮮度保持技術の進歩に伴って家きん肉の潜在的ニーズが極めて大きくなっている。一方で、豚肉生産の回復やCOVID-19の拡大は家きん肉消費にマイナスに働いているため、今後のさらなる消費拡大のためには政府および企業の長期的視点に基づく支援や取り組みにより、家きん肉および家きん肉製品の消費喚起を図る必要がある。
(2)家きん肉と卵の都市農村別消費量
1人当たりの家きん肉消費量を地域別に見ると、農村部は都市部に比べて少ない状況にある。中国統計年鑑によると、2019年の全国都市部の年間1人当たりの家きん肉消費量は11.4キログラムであるが、農村部は同10.0キログラムであり、約1.1倍の差が生じている。2013〜19年の6年間での推移を比較すると、都市部は同8.1キログラムから同11.4キログラムに増加し、農村部では同6.2キログラムから同10.0キログラムに増加している。増加率は都市部で1.4倍、農村部で1.6倍となり、農村部の消費量の増加率が都市部を上回っている。このため、都市部と農村部の消費量の差異は縮小する傾向にあり、農村部を中心に家きん肉の
嗜好が高まっているとみられる。
卵の消費についても家きん肉と同様の傾向が見られる。同期間の都市部の年間1人当たり消費量は年3.7%のペースで増加しているが、農村部では同6.2%のペースで増加しており、卵も都市部と農村部の消費量の差異が縮小する傾向が見られる(図9)。
(3)COVID-19による消費への影響
COVID-19の影響を受けた2020年に着目すると、国家統計局によると7月調査時点では家きん肉の消費はすでに正常な水準にまで回復しており、学校の再開、中秋節や国慶節(いずれも10月)が近いことも影響し、増加傾向にあった。需要の増加に伴い、国慶節前の家きん肉価格は上昇傾向にあったが、家きん肉の供給量は十分に確保されていたこともあり、上昇幅はわずかとなり、国慶節を過ぎて需要が落ち着くと価格も落ち着きが見られた。冬に入り、再びCOVID-19の感染が散発すると多くの地域で感染防止対策が取られ、飲食店での食肉消費にも影響が及ぶようになった。21年2月の春節(旧正月)には家きん肉の消費が増加し価格は上昇したものの、旧正月を過ぎると需要が落ち着いて価格が下落する時期に入り、21年も同様に下落傾向で推移している。
(4)家きん肉の地域別消費量
家きん肉の消費を地域ごとに見ると、中国は国土が広大で、環境や生活習慣などがさまざまであることから、家きん肉に対する嗜好性も地域によって大きく異なる。2019年地域別の年間1人当たり家きん肉消費量を見ると、中国南東部の華南地域や華東地域は家きん肉の消費が比較的盛んな地域であることが分かる(図10)。華南地域では広東省、広西チワン族自治区、海南省および福建省で1人当たりの消費量が10キログラムを超え、特に広東省、広西チワン族自治区ではそれぞれ同25.9キログラム、同24.8キログラムと全国で第1、2位の家きん肉消費量を記録している。華東地域でも同10キログラム以上消費している地域が数多く存在しているが、それ以外の地域ではそこまで盛んに消費している地域は少なく、特に西北地域は最も少ない地域である。
(5)鶏卵の価格
鶏卵は食品の中でも重要な品目の一つであり、生産者にとっては主要な収入源であるため、鶏卵の価格変動は消費者の食生活に直接影響するばかりでなく、畜産業の発展にも影響する。近年、中国の鶏卵の卸売価格は卵用鶏の飼養羽数、感染症の発生状況、豚肉価格など各要素の影響を受け、1キログラム当たり4〜12元(68〜204円)で推移している。全国の鶏卵価格のデータを図11と同様に地域ごとに区分して見ても、2017年以降、各地域の鶏卵価格は全国平均と同様の傾向を示し、地域間での価格差はあまり見られない(図11)。
時系列で見ると、17年1〜5月にかけて全国的に価格は下落した。これは鳥インフルエンザのまん延により飼養羽数が減少し、市場への供給量や生産コストに影響が及んだことだけではなく、一部の誤った情報が拡散されたことで、消費者間で鶏卵消費に対する不安感が広がったことも一因とみられている。毎年12月〜翌3月は鳥インフルエンザの人への感染がたびたび発生する時期であるため、その感染状況によっては鶏卵価格への影響も生じている。18年8月にはアフリカ豚熱の第一例目が発生し、全土に感染が拡大すると鶏卵の需要が増加し、価格は上昇に転じた。20年1月にはCOVID-19の影響が本格化し、多くの農産物卸売市場が閉鎖を余儀なくされ、大幅な価格下落が見られた。全国平均価格はCOVID-19拡大前の19年9月に1キログラム当たり10.7元(182円)の値を付けて以降下落し、20年5月には同5.4元(92円)まで下げた。21年1月時点で価格は回復しており、COVID-19拡大前の水準に近付いた。