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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2021年11月号

飼料供給は潤沢も肉牛供給は引き続きひっ迫

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肉牛取引価格は再び過去最高を記録
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、上昇基調が継続している。9月に入り同価格は一時的に1キログラム当たり1000豪セント(820円:1豪ドル=82円(注1))割れとなることもあったが、その後は反転し、9月21日には再び過去最高となる同1033豪セント(847円)を記録するなど、依然として高値が続いている(図5)。
 

(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
 


 

 豪州東部地区の主要州の肉用牛生産者販売価格も、依然として上昇傾向で推移している。9月のニューサウスウェールズ(NSW)州の若齢牛価格は同694.5豪セント(569円)、また、主に日本市場向けとされるクイーンズランド(QLD)州の去勢肥育牛価格は同709.5豪セント(582円)、主に米国向けのハンバーガー用パテとして使用される経産牛の価格は同642.3豪セント(527円)と、依然として高値が続いている(図6)。
 


 

 一方で飼料価格は、飼料穀物の育成に良好な天候が続いていることを背景に低水準で推移しており、QLD州南東部のダーリングダウン地域における9月10日時点の小麦価格は、1トン当たり325豪ドル(2万6650円)、大麦価格は同280豪ドル(2万2960円)と、いずれも前月割れとなっている(図7)。
 


 

 また、豪州農業資源経済科学局(ABARES)が9月7日に公表した2021/22年度(7月〜翌6月)の小麦および大麦を含む冬作物の生産予測では、生産量は過去10年平均を大きく上回り、昨年度に次ぐ5477万5000トン(前年度比1.7%減)に達するとしている。内訳として、小麦は3263万3000トン(同2.1%減)、大麦は1247万7000トン(同4.7%減)と見込まれている(注2)
 

(注2) 海外情報「2021/22年度穀物の生産見通しを発表(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003052.html)を参照されたい。
 

 MLAによると、肉牛生産者は高水準の肉牛価格と低水準の飼料価格を背景に、より軽量なもと牛を選択することで調達価格を少しでも低く抑え、利益の確保を目指す傾向があるとしている。
 

減少幅は縮小傾向ながらも、前年同月を下回る
 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、国内の牛肉供給のひっ迫を背景に、2021年8月の牛肉輸出量は7万7150トン(前年同月比1.1%減)とわずかに減少した(表2)。また、同年1〜8月の累計も58万732トン(前年同期比19.4%減)と大幅に減少したものの、7月と比較すると減少率は縮小した(7月の前年同月比:8.6%減、1〜7月の前年同期比:21.6%減)。
 


 

 輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは2万466トン(前年同月比4.1%増)とやや増加したが、1〜8月の累計では15万6556トン(前年同期比12.3%減)となった。
 米国向けは1万3562トン(前年同月比25.5%減)と大幅に減少し、1〜8月の累計でも9万2670トン(前年同期比40.8%減)と前年を大幅に下回るペースとなっている。
 韓国向けは1万2888トン(前年同月比0.6%減)とわずかに減少したものの、1〜8月の累計では10万3075トン(前年同期比0.3%減)と日本に次ぐ水準で推移している。
 このような動きの中、東南アジア向けは9613トン(前年同月比35.9%増)と大幅に増加し、1〜8月の累計でも6万6479トン(前年同期比1.8%減)と、前年に近い水準となっている。内訳を見ると、特にフィリピンやインドネシア向けが増加している。現地報道などによると、インドネシア向け豪州産肥育もと牛の価格上昇や、米国の干ばつによる輸入飼料価格の高騰などがインドネシアの肥育業者の経営を圧迫しているとされており、このことが輸出量増加の一因ではないかと推測される。
 

(調査情報部 国際調査グループ)