豚肉生産量、引き続き増加の見通し
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2021年7月29日、21年および22年のメキシコの豚肉需給見通しを発表した。これによると、21年の生産量は149万5000トン(前年比3.0%増)、22年は154万トン(同3.0%増)と引き続き増加が見込まれている(表8)。これは、国内の外食需要の回復や好調な輸出需要が一因とされている。これら豚肉需要を背景に枝肉価格が堅調に推移する中、一部の大手パッカーは増産体制の整備を進めている。
輸入量については、21年は98万5000トン(同4.2%増)、22年は98万トン(同0.5%減)と見込まれている。輸入豚肉は加工仕向け用のもも、うでが中心とされており、約9割が米国産、残りはカナダ産などとなっている。
輸出量については、21年は39万トン(同13.4%増)、22年は前年並みと見込まれている。メキシコの主要輸出先は東アジアと米国であり、日本や韓国向けには一次加工品、米国向けにはロースなどの高級部位を中心に輸出されている。21、22年の輸出量はともに主要輸出先での旺盛な豚肉需要を背景に高水準になると見込まれている。
8月の生体価格、前年同月比4割高
メキシコでは、国内外の好調な需要に加えてトウモロコシなど飼料コストの上昇に伴い、豚肉など食肉の小売価格は記録的な高水準で推移している。
21年8月の生体豚価格は、前年同月比40.8%高の1キログラム当たり42.28ペソ(275円:1ペソ=6.5円
(注))となり、6カ月連続で前年を上回って推移している(図14)。また、同月の豚枝肉価格は、生体豚価格の上昇を反映し、同13.7%高の1キログラム当たり54.0ペソ(351円)と高水準で推移している(図15)。
(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
このような中でメキシコ政府は21年6月28日、食肉の価格上昇を抑制するため、牛肉、豚肉、鶏肉の無税輸入枠の導入を発表した。無税輸入枠は牛肉が7000トン、豚肉が1万トン、鶏肉が3万トンと設定されており、実施期間は発表日から同年12月31日までとなっている。これにより、21年の豚肉輸入量は前年比4.2%増と見込まれているが、USDAなどによると、主要輸入先である米国からの豚肉輸入がすでに無税であることなどから、価格上昇の抑制効果は限定的との見方もある。また、メキシコでは豚肉の生産費の約75%が飼料費とされており、輸入飼料の割合が高いことから、豚肉価格は引き続き高止まりでの推移が見込まれている。
21年上半期の豚肉輸出量、前年同期比26.1%増
メキシコの豚肉輸出量は、主要輸出先の旺盛な豚肉需要を背景に好調に推移している。2021年上半期(1〜6月)は12万6100トン(前年同期比26.1%増)と大幅に増加した(表9)。
20年に前年比7倍超まで急増した中国向けは、21年上半期も前年同期を大幅に上回ったものの、中国国内の豚肉生産量が回復し、豚肉価格が低下していることから、5、6月は前年同月を下回るなど、今後の動向が注目される。
(調査情報部 河村 侑紀)