2021年上半期の生乳生産量は増加
中国では、国民所得の増加や健康意識の高まりなどから乳製品の消費が定着しつつある中、COVID-19の拡大が契機となり、発酵食品の持つ免疫力増強効果への期待などから、ヨーグルトを中心とした乳製品需要が伸びているとされている。こうした状況を背景に、同国では、生乳や乳製品の増産機運が一段と高まっており、中国国家統計局によると、2021年1〜6月の生乳生産量は前年同期比7.6%増の1540万トンとなった。
中国政府は、旺盛な需要に対応すべく酪農業発展の重要課題として、酪農家の大規模化と遺伝的改良による1頭当たり乳量の増加を挙げている。21年7月に中国農業農村部と中国乳業協会が共同で発表した「中国乳業品質報告(2021年)」によると、2020年の大規模農家飼養割合(全乳牛飼養頭数に占める、乳牛飼養頭数100頭以上の農家で飼養される乳牛の割合)は67.2%(前年比3.2ポイント増)、乳牛1頭当たり乳量は年間8.3トン(同0.5トン増)となった。
生乳価格は引き続き高値で推移
生乳生産は増加しているものの乳製品需要が引き続き堅調なことから、2021年9月の生乳価格は1キログラム当たり4.3元(76円:1元=17.6円
(注))と引き続き高値を維持している(図23)。生乳価格は5月以降、緩やかな上昇にあるが、この要因について現地専門家は、気温上昇に伴い生乳の供給量が減少した一方、アイスクリームなどの需要増加により粉乳需要が増加したためと分析している。
今後の生乳価格の動向については、国内乳業メーカーの調達する原料が比較的安価な輸入品にシフトすることで、現在と同程度で推移するという予測がある。一方、需要期である春節に向けて、さらに10%程度上昇するという予測もあるなど現地専門家の間でも見解が分かれている。
(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。
乳製品輸入はおおむね増加するも、一部品目では国産回帰の動き
2021年1〜8月の乳製品輸入量は、引き続き需要が国内生産を上回る状況にあることからおおむね増加傾向にあるが、国産にシフトしているとされるヨーグルトと育児用調製粉乳については、前年同期に比べて減少した(表13)。
一方、全粉乳および脱脂粉乳については本年に入ってから継続的に増加しており、8月時点ですでに昨年の年間実績と同程度の輸入水準に達している。この要因について現地専門家は、中国国内の生乳価格の高止まりによって国産と外国産との原料価格差が拡大したため、国内の乳業メーカーがコストを考慮して輸入粉乳を大量に利用しているためとしている。しかしながら、現地報道によると、粉乳の国際価格の高騰や同国内の粉乳在庫量が十分に確保されていることなどから、第4四半期(10〜12月)には輸入量が落ち着くとの見方も報じられている。
(調査情報部 阿南 小有里)