令和3年10月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり213円(前年同月比49円高)と8カ月連続で前年同月を上回った(図1)。鶏卵卸売価格は、気温の上昇に伴い低下し、夏場の低需要期に底を迎え、年末の需要期に向けて上昇する傾向がある。本年も気温の上昇に伴う需要の減少などにより、夏場は下落傾向で推移したものの、昨冬の高病原性鳥インフルエンザの発生により採卵鶏の殺処分羽数が多かったことなどから、同価格は前年を上回って推移している。10月は、直近5カ年の同月の中で最も高い価格水準となったものの、月初の同220円から25日には同205円まで下落し、例年の傾向である10月中の価格の上昇は見られなかった。
今後について、供給面は、例年同様、最需要期に向けて生産がピークに達すると見込まれる。需要面は、全国の緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置の解除に伴い外食需要の回復が期待されるとともに、年末商戦の盛り上がりに加え、おでんなどの季節需要がさらに高まると見込まれる。
家計消費購入数量、前年同月を下回るも高水準
年間260万トン程度生産される国産鶏卵は、約5割が家計消費用として、約3割が飲食店など向けに業務用として、約2割が食品メーカーなど向けに加工用として仕向けられており、家計消費が国産鶏卵の需給に与える影響は大きい。
家計消費の動向を見ると、9月の鶏卵の家計消費量(全国1人当たり)は、902グラム(前年同月比0.7%減)と前年同月をわずかに下回った(図2)。令和3年の月ごとの家計消費量は、2月以降、巣ごもり需要の拡大により消費量が伸びた2年の水準を下回って推移しているものの、前年同月との差は7月は63グラムだったが、9月は6グラムまで縮小した。なお、COVID-19流行前の5カ年(平成27年〜令和元年)における9月の平均消費量(851グラム)と比べると51グラム多く、引き続き高い水準と言える。また、1人当たり支出金額については、小売価格の上昇により294円(同7.6%増)と前年同月をかなりの程度上回った。
(畜産振興部 前田 絵梨)